不完全恋愛【不死川実弥】

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部署はいくつかあるけれど、
そこまで大きな会社ではないうちの会社。
三年近くいればどの部署にもそれなりに仲のいい人が出来るわけで。






｢不死川くん、今月も売上トップらしいよ！｣


｢かっこいいよね、好きになっちゃいそう〜…。｣



どこからかそんな会話が聞こえてきて、自然に足が止まってしまった。



｢あ、佐伯さんじゃん！お疲れ！｣

私に気付いた一人の女性社員が近付いてくる。




『お疲れ様。
…不死川さん、今月もトップだったのね。』


｢あ、聞こえた？そうなの、凄いよね。
…ねぇ彼、彼女いるのかな？｣



単なる尊敬から、下心が見え隠れするような眼差しに変わったのを私は見逃すことが出来なかった。



『ん〜どうかな？彼、ミステリアスな部分があるから…。』


｢ね、今度聞いてみてよ！同じ大学でしょ？｣




そう、これだから嫌なのだ。
彼と私は同じ大学で同じ学部であった。
同じ場所で学んでいた者たちが同じ会社に入社。
世間一般的には良くあることだ。
だが、私にとってはいい迷惑である。
たったそれだけの条件で彼の事をなんでも知っている、または気軽にプライベートな事を聞ける人にされてしまうのだから。




『あはは…聞けたら聞いてみるね。』


じゃあ私急ぐから…といつものようにテンプレートな言い訳をしてその場を後にした。
お願いね〜！という半分冗談、半分本気のような声を背中に受けながら。






＊





最寄り駅から徒歩十分ほどの場所にあるアパート。
カンカン、と音を立てながら階段を上がる私の手には買い物袋。今日は肉じゃがの予定だ。
さぁお腹はペコペコだ、早く夕食にしよう。
ガチャリと鍵を回し、ドアを開けた。



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