蜃気楼*FK

蜃気楼*19 ページ19

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死にてーな、
外もまだ暗い時間は、軽率にそんなことを考えてしまうからいけない。




"……おまえが、……生きてくれて、よかった"





何度目かの北山の言葉が頭をよぎる。
何がよかったんだよ、お前が生きていないと、何も、



もうこの数日で何度思い出したかわからない北山のさいごの瞬間をぼんやりと思い出す。



……唇を重ねてしばらく、北山の唇が少し震え、
唇の隙間から、微かに、空気が漏れていた。





"……っ…、…………"




何かを俺に伝えようとしたんじゃないか、なんて都合のいいように考えて、一生懸命思い出す。







"…やっと…、…れた……"








ガタッと立ち上がる。
"やっと"という言葉にたどり着き、異変に気づく。
やっと、って、まるで、そんな、
一度目じゃないような…………



急いでテディベアを抱え、
こんな状態で車運転して大丈夫かな、なんてやけに冷静に考えながら、車のキーを手にする。




何日もほとんど食べていないはずの体は、普通に歩けるはずもなく、焦った俺は何もないところで足がもつれて転んだ。
情けない自分の姿に苦く笑い、ゆっくりと立ち上がり、渉の持ってきてくれたゼリーを手に車に乗り込む。
ここで俺が死んでしまっては、すべてが無駄になってしまう。





俺が北山を守ろうとした2回目の9月16日。








……そして、きっと北山が俺を守ろうとしたであろう、2回の9月16日も。









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