蜃気楼*15 ページ15
*
はっと目が覚める。
…隣にいたはずの温もりがいない。
ざわざわと胸が騒ぎ始める。
俺、どれくらい寝てた?
何してんだ、こんな大事なときに、寝てる場合じゃ……
焦り出す頭を落ち着かせて、時計を見る。
15時10分……
そんなに時間は経っていないらしかった。
なんならまだ、出かけたばかりだろうか。
急いで洗面所を確認しにいく。
あいつは出かける前に必ず歯を磨く。
……まだ雫が残っている、やはり時間はそんなに経っていない。
急いで靴を履いて家を飛び出す。
時が繰り返しているならば、あいつの目的地はあのアクセサリーショップだろう。
寝起きの体に鞭打って走る。
じりじりと9月とは思えない日差しが照っていた。
街まで出たところで、その姿を見つける。
今から、アクセサリーショップに入ろうというところだろうか。
急いで駆け寄ってその腕をつかむ。
「…帰ろう藤ヶ谷」
「…っ!?おまえ、なんでここに、」
「いいから、早く帰ろう」
「っ、なんだよ、先帰ってろって!」
焦る気持ちから手のひらに汗をかき始めているのがわかる。
藤ヶ谷はそんな俺を怪しげに見つめる他ないらしかった。
「あとでちゃんと、わけは話すから、はやく……っ!」
藤ヶ谷の向こう側から、走ってくる乗用車に、どくりと心臓が跳ねた。
間違いなく、このあとこの店に突っ込む車だった。
たしかに、ものすごい速度が出ている、これは事故るわ、
「…北山?」
ぴたりと止まったまま動かない俺を見て藤ヶ谷が名前を呼ぶ。
はっとした時にはもうすぐそこまでその車は迫っていた。
咄嗟に掴んだままの藤ヶ谷の腕をぐっと引いた。
ドンッ
ガシャンっ
ものすごい音とともに全身に鈍い痛みが響く。
腹部に湿っぽい感じがして、見なくてもそれが何かはわかった。
…あー、ミスった、かも
めちゃくちゃ血、出てるんですけど、
俺、死ぬ?
「ぃ、って……なにすん、……っ北山!?」
俺がものすごい力で引いたからどこかで体を打ったのであろう、
痛みを訴えながらも焦って何度も俺の名前を呼ぶ藤ヶ谷の声が遠くで聞こえる。
これもしかしたら最悪の失敗の仕方なんじゃない?
次第に遠のく意識の中、体の痛みだけははっきりと感じていた。
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しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時