この街で

07.Ki ページ7

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平日ど真ん中、

週末より人通りの少ない繁華街


今日は早く仕事が終わったのもあり

前の職場に顔を出してきた


前の職場……と言っても、

オーナーに頼まれた時には

今でもたまに手伝ったりしている





「ったく、殿ってば……

顔出せばすぐ“今日は出れるか？”

って聞いてくるんだもんなぁー」





まぁ、それが内心では

すげぇ嬉しかったりするんだけどさ





昔、俺を拾ってくれたオーナー


通称、殿


殿はこの街で俺を

一人前のホストとして育ててくれた


そんな殿に少しでも恩返しが出来るなら

俺は喜んで働かせてもらう


そこで働くメンツは俺がいる時から

随分と入れ替わったけれど

未だにしょっちゅう顔を出す俺は

新しい奴らとも結構上手くやっている


まぁ、現役同士と違って

競争相手にもなんない俺だからってのと

今でも俺を求めて来てくれる人を

自分の客にする為に取り入ろうってのも

理由にあるんだろうけどな





「…………んっ？」





そんなことを考えながら歩いていると

ふと誰かに見られている気がして足を止めた


知り合いでもいたか？なんて

ｷｮﾛｷｮﾛ周りを見渡してみるも

それらしい人も声を掛けて来る人もいない





普通に考えて、こんな人の多いところで

誰かの視線なんて気付くわけない





ただの気のせいか…………？





誰に呼び止められることもない俺は

早く帰ろうと再び歩き出した





けれどもなぜか先程の違和感が拭えない





嫌な感覚を振り払う為に

遠回りをしたり小路に入ってみたり

普通ならばしないような

非効率な道順を通ってみる





そんな中、何度も目にした同じ人の姿





勘違いかもしれない


はじめはそう思った


けれども、ふとした瞬間、

急に湧いてきた恐怖心


一度そうなったらもうダメだった


ｿﾞﾜﾘと背筋が寒くなる感覚、

男のくせに情けないけれど

血の気が引き、脚が震えてくる





何とか平静を装って細い路地を抜けた瞬間、

弾かれたように駆け出した


夜が近くなり、人が増え始めたこの街は

人なんて簡単に隠してくれる


けれども、一度湧いた恐怖心は消えず

まだ追いかけてくるかもという不安で

俺は暫く走り続けた





「……ﾊｧ……ﾊｧ……ｯ、ﾊｧ……」





日が落ちるのが随分と遅くなり

まだ明るさの残る道を全力で走る俺


走りながらふと目に入ってきた

店舗の看板の電気を消す男性


俺は反射的に声を掛けた





「あの………っ」





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