この街で

04.Ki ページ4

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「いつもこんなに早いんですか？」


無言でいるのも変な感じがして

当たり障りのない話題を持ち掛ける


「あーっ、いつもは違いますよ？

友人と夜遅くまで飲み明かして……

ここに泊まったんですが、

目が冴えてしまったので………

ふふっ、今日は特別です」


奥のソファを見て優しく微笑んでいる


その視線の先には

これまたｽﾗｯとした男性が

ソファに横たわり熟睡していた


「あっ、お友達眠ってたんですね」


慌てて声を潜めてすみませんと謝る


「あっ、大丈夫ですよ？

さっき寝たばかりなんで

そう簡単には起きませんから」


友達が寝たばかり……ってことは、

もしかしてこの人寝てねぇのか？


ホントはすぐにでも寝てぇんじゃねーの？


元はと言えば、

この人が水をぶっかけてきたせいなのに

すげぇ申し訳ない気分になってくる





「すみません、俺そろそろ帰りますね？」





慌ててｶﾞﾀｯと席を経つと

あっ……と声を漏らすイケメンくん


「…………？」


あの……とこちらを窺うように口を開いた





「フレンチトースト……」





「えっ？」


フレンチトーストがどうしたんだ？


首を傾げながら待っていると

遠慮気味に 言葉を続けてきた





「フレンチトースト食べませんか？

あの……、貴方に何もお窺いせずに

勝手に作ってしまったので

ご迷惑じゃなかったらなんですけど ……」





いっぱい用意しちゃったので……と

卵液に浸かる食パンのボウルを

顔の近くの高さまで掲げている


「えっ、でも……」


営業の為の下拵えだと思っていたものは

俺のために作ってくれたものだった


“基本的にカフェメニューとして

あるわけじゃない”なんて言われたら……

遠慮しときますなんて言えねぇっつーの


「すみません、ありがとうございます」


俺は申し訳ないと思いながらも

腰を再び椅子に落ち着けた





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