この街で

28.Ki ページ28

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腕を掴んでいた力が緩み

そこからひんやりとした風が入り込む





「藤ヶ谷さん……？」





二の腕を掴んでいた手のひらが

俺の腕の上をゆるゆると移動する


指先が手の甲にまで到達すると

そこからきゅっと手を握りこまれた





「ひとりで背負い込むのはナシだよ？」





藤ヶ谷さんの熱が

じんわりと広がっていく





「心当たりは……ないんですよね？」





俺を《友達》と言ってくれる

藤ヶ谷さんの穏やかな声





巻き込んじゃいけない





そう思っているのに………





「………わかんないんです

目深に帽子を被ってた上、

マスクまでしていたから

顔なんて全然見えなくて…………」





藤ヶ谷さんの持つ柔らかな温かさに

俺は再び縋ってしまう





「じゃあ、特徴とかは？何か覚えてませんか？」





「暗かったから………」





「あーっ……、そうですよね」





困ったように微笑む藤ヶ谷さん





ごめんなさい





でも、特徴なんてホント無かったんだよ





強いて言えば服が真っ黒だったくらい？





とりあえず、スーツではなかったな





「……ホストを現役でやってた頃は

仲間にやっかみを受けて嫌がらせされたり、

勘違いしたお客さんに

ストーキングされたりもしたけれど……」





今の仕事に着いてからは

そんなことは勿論なかった





でも、あの時と同じような感覚だった





逃げても逃げても

ねっとりまとわりつくような





嫌な感覚





誰も助けてくれない


勿論、警察なんて行っても意味はない


自分で自分を守るしかない


またそんな日々が始まるのか……





「……北山さん、うちに来ませんか？」





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