この街で

12.Ki ページ12

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“こちら、この前話した北山さん”


“はじめまして”


“こっちは、渉、横尾渉ね”


“横尾渉でーす！北山さんはなんて名前？”


“えっ……？えっと……、北山です……？”


“あーっ、違う違う！下の名前！！”





初めて言葉を交わした日から

横尾さんは俺のことをみっちゃんと呼ぶ


藤ヶ谷さんと同じく

横尾さんも大きなギャップの持ち主


俺の横に座ると

“いつものちょーだい”って

藤ヶ谷さんにアピールしている





「たまにはコーヒーも飲んでよねぇー」


「だって、コーヒーより

ココアの方が好きなんだもん」


「まぁ、いいけどさぁー、

ここコーヒー専門店だからね？

一応こだわってんのよぉー？」





ぷくっと頬を膨らませて

横尾さんをジト目で見る藤ヶ谷さんと

それをモノともせずに

美味しそうにココアを堪能する横尾さん





「んはっ♪ホント仲良いですよねぇー」





「ただの腐れ縁ですよ」


「おまっ、人のことよくこき使うくせに

その言い方酷くねぇっ！？？」


しれっと言い切った藤ヶ谷さんに

横尾さんは納得いかんとばかりに反論している


《わちゃわちゃ》といった表現が

しっくりくるふたりのやり取り


学生時代の友人と付き合いがない俺は

そんなふたりを眺めているのが

好きな反面、とても羨ましくなる





「みっちゃんは幼馴染みとかいないの？」





何気ない横尾さんの言葉


幼馴染みなんて言葉久しぶりに聞いたな





「あーっ、いましたよ？

付き合いは小学生くらいまででしたけど」


「えっ、今は付き合いないの？

引越ししちゃったとか？？」


「あーっ、まぁ、そーゆーことですね」


「んじゃ、遊ぶとしたら

学生時代の友達とか会社の人とか？」





どんなことして遊ぶの？なんて

当たり前のように聞かれて

俺は言葉に詰まってしまった





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