あの日の月は綺麗だった

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「ふっかさん、ごめん。ちょっとええ？」

楽しそうに話してるところに行くんは申し訳ない。
けど、今を逃したらこの勇気が消えてしまいそうだ。


「いいよ」
ふっかさんは俺が何を言いたいんかわかったんやろな。
優しく笑った。



「ここでいい？」
スタッフさんもあまり通らん通路で止まった。
「うん。大丈夫やで」

ちょっとドキドキしてきた。
嫌われたらどうしよう。
気持ち悪いって思われたら。


話しているところを邪魔して来てもらったんに、緊張してうまく話せん。


「康二さ、今日空いてる？」
「へ？」

俺がずっと黙っていたらいきなりそう言われた。

「メシ食いに行こうよ。それか作ってくれてもいいけど。どう？」
「ええの？」
「俺が誘ってんだけど」
笑いながらそう言ってくれた。

力が抜けなかった拳が緩んで手のひらが汗で濡れていた。

「一緒に食べたい」
「じゃあ決まりな。ラーメン...だと話はあんまできないか。どこ行く？」
「俺作るからうち来てや」

誰かに聞かれたら困る。
それに俺、泣いちゃうかもしれんし。

甘えてばっかりやな...


「わかった。直接行っていいわけ？」
「うん」

「おっけー、マネジャーに言っとくわ」


「深澤さーん」
その時遠くから呼ぶ声がした。
個人撮影の順番が回ってきたんやな。

「俺行くわ。何作るか考えとけよ、楽しみにしてるから」
そう言ってまた俺の頭を撫でて行った。

ほんまに優しい人やな。




☆☆

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