薬指の約束

あのね ページ23

もしもあの日



独歩と私の心が離れてしまった日






約束の時間に独歩が現れていたら…





もしもあの日





予約していたレストランで記念日をお祝いしていたら…






もしもあの日




もしも、もしも…





何度後悔しても後悔しきれない
もしもの話をしても仕方ない。


確かにあの日、私の心は悲鳴をあげていた。








独歩からの着信が鳴り止まないスマホを見つめる。




彼はきっと今頃、私を繋ぎとめるために今まで以上に必死なんだろう。






何度目かの着信が鳴った時、ようやく私は通話ボタンを押した。





『っもしもし！Aっ…よかった…出てくれないかと…』




「……うん」




心底安心した、



そんな声色の独歩にただただ涙が出る。
こんなにも独歩のことを愛していたんだと声を聞いただけで溢れる涙で実感する。




『ごめん、ごめんな…不安にさせるようなことばっかり…俺…ほんとに…っ』




「…独歩、」




『…うん、どうした？』




優しい声色に変わった独歩。
私の大好きな優しい優しい声。




「……っどっぽぉ…」





会いたい、会いたい



その一心だった。


あれだけ強がって独歩と別れると決意したのに
まだ独歩の心の中に少しでも私がいるのなら
離さないで欲しい、繋ぎとめて欲しい
そう思うようになったのは毎週のように会いに来てくれる独歩のおかげ。



独歩によって傷つけられた私の心は
その独歩によって傷を癒されていた。







『……今から高速飛ばして行くから。

待っててくれるか？』






私の気持ちが届いたのか






「んぅ、っ…待ってる…」









『Aに伝えたいことがある』
「独歩に伝えないといけないことがあるの」









聞いてくれますか？

満たされる→←最悪な金曜日

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す