最悪な金曜日 ページ22
doppo side
俺の身勝手でAを傷つけて
俺がAを諦めたくないから
必死で繋ぎとめていた。
…いつか、また俺を信じてくれる日がきたら…
そんな都合のいいことしか考えてなかった。
一度、Aを裏切った俺を、ご両親も温かく接してくれ、毎週末訪れる俺の体調を心配さえしてくれる。
そんな状況に、その"いつか"がそう遠くないのではないかと自惚れていた。
悪い、残業で今日は行けそうにない
そんな連絡をAに入れた金曜日。
週末、一緒に過ごすためにその他の日で激務をこなしていたが、その日はどうしても残業をしなければならないほどに仕事が残っていた。
他の社員達が帰宅していく中、俺ひとり、膨大な量の書類の処理に追われていた。
そんな時
「先輩、手伝います」
声をかけてきたのは、俺の過ちの相手
「…あ、いや…大丈夫大丈夫…
遅くなったら危ないし…はやく帰ったほうが…」
やばい。
目を合わせることなくそこまで言うと
「…遅くなったら、独歩さんが送ってくれますよね?」
するりと細くて長い指が俺の指に絡んでくる。
「……っ」
「明日はお休み、ですしね」
彼女の指が、俺の左手の薬指にはめてある指輪を撫でる。
少しずつ、少しずつ
彼女の唇が近づいてきたところで
俺のスマホが通話を知らせる。
慌てて彼女から距離を取り、少し離れたところで通話を繋ぐ。チラリと見えた液晶画面にはAの表示があり、普段なら喜ぶところだが内心ドキドキしていた。
「っ、もしもし!どうした…っ」
声が上擦る。
『…ごめ、まだ仕事中?』
「あ、ああ。でも大丈夫だ。
…どうした?」
声が聞きたくなって、
そう答えるAに思わず息を飲む。
俺も会いたい。
会って抱きしめてキスしたい。
今日は行けないが、明日の朝一で必ず会いにいく
そう、伝えようとした時
ぎゅうっと背中に抱きつかれる感覚
「独歩さん!」
「っわ、」
「私といるときは電話ダメです‼」
「‼っちょ、っ」
背伸びして俺にキスをしてスマホの通話を切る彼女。とてもスムーズな動作に呆気を取られた。
まずい。
A、絶対誤解してる
「…ごめん」と後輩をそっと押しやり、Aに電話するため急いでその場を離れた。
自惚れだ。完璧に自惚れだが、
Aが泣いている、
そんな気がした。
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死にそう - ほんとに好きです。最高すぎて、自分がこんな素晴らしいもの読んですみません…。って気持ちになる (2021年3月12日 0時) (レス) id: 1084582c74 (このIDを非表示/違反報告)
リドルの妹になりたかった願いから生まれた夜月です嘘です。 - 独歩よ…………幸せにしてくれないと本当に真面目に泣きそうだから夢主ちゃんを幸せにしてくれぇぇぇァァぁぁ!! 作者様も作品も本当にもう好き。 (2021年1月9日 23時) (レス) id: 7e61cd56ff (このIDを非表示/違反報告)
十鞠 - 独歩ぉ"ぉ"ぉ"、、夢主ちゃんを幸せにしてぇぇぇ、、、、。感動をありがとうございます。 (2019年8月21日 18時) (レス) id: fb05fdae18 (このIDを非表示/違反報告)
失格人間。(プロフ) - 凄い好きです…話の流れ。腹の中がムズムズするこの癖になる感覚がして…………好きいいいいい本当、ありがとうございます!! (2019年4月4日 11時) (レス) id: bb922c1436 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - 更新ありがとうございます(´;ω;`)ほんとに好きです…最高です… (2018年12月28日 4時) (レス) id: 73f2a4f0cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リト | 作成日時:2018年9月23日 15時