お礼の時間 ページ9
「ちょ、手なんて繋がれなくても歩けるんですけど」
「えー?転ぶと危ないじゃん」
「転ぶわけ無いでしょ、この私が」
しばらくの間歩いていると、赤髪君が立ち止まった。
「……?何、急に立ち止まって」
「ねぇ、ずーっと疑問に思ってたんだけど」
「何?」
「君、かなり自分の腕に自信持ってるよね、何で?」
「!」
まさか、そこに触れてくるとは。
この人、ホントに何者……?
「さっきの喧嘩だってさ、普通の女子中学生が出来る動きじゃないって。ね、何隠してんの?」
人には、知らないことがいい情報もある。
私が如何に残酷無慈悲かわかってしまうことはすなわち、同じクラスメートとしてこの先認識出来なくなるということ。
任務に支障が出ることだけは避けなければならない。
だから、私はこのE組というクラスで天才を演じきる、そして、誰もが尊敬し、協力したくなるような人柄を作る。
これが、今回私の偽りだ。
だから、ここで赤髪君の質問には答えられない。
だから私はにっこりと笑ってこう言った。
「人にはね、知らないことがいい情報もあるんだよ」
「は?それってどういう……」
「あ、あれ校舎?なんで本校舎と違うかはわかんないけど。連れてきてくれてありがとね!」
案の定赤髪君は驚いたような戸惑うような顔をしたので、話を逸らす。
そして深く干渉される前にその場を離れる。
赤髪君が「わけわかんない」と呟いていたのは私には聞こえなかった。
ラッキーアイテム
革ベルト
128人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白猫 x他1人 | 作成日時:2015年3月20日 19時