鼻歌の時間 ページ16
「……♪………♪…♪」
鼻歌を歌って思い出していた。
帰り道、親友と熱唱しながら帰ったこと。
泣いてるとき、カラオケに連れてってくれて元気の出る歌を歌ってくれたこと。
……屋上で、泣きながら歌ったこと。
歌には、すごい思い出があった。
全く、思い出しちゃいけないっていうのに、全然忘れてなんかいない。
2年も経った今でも、ずっと忘れてなんかいない。
あの、苦しそうな横顔。
最後まで、私は気付いてなんてあげられなかった。
目を閉じればいつだってあの日のことがまぶたの裏に浮かぶんだ。
……君がいなくなった、あの日のこと。
「ちょっとAさん!?何で授業中に鼻歌歌ってるんですか!?しかも目まで瞑って寝ようとしてません!?」
上から声がして見上げると、そこには殺せんせー。
「……いや、別に、少女時代を思い出してただけです」
「いや、今も少女でしょう!?」
真顔で返すと見事な突っ込みが返ってきた。
クラスのみんなが笑っている。
「いや、私ホントは63歳」
冗談めかして告げると、今度は磯貝君から鋭いツッコミ。
「それくらい今の医術は進歩してるんだな……」
「あの、私整形してません」
再びクラスから笑い声が溢れる。
「ホントは14歳です、信じた人すいません」
「「いや、誰も信じてないから!」」
そんな私達の様子を見て、殺せんせーは怒るタイミングを失ったようだった。
そこで、ナイスタイミングのチャイム。
「きりーつ、れーい、ありがとーでした」
私が勝手に立って1人で号令をかけてまた座る。
それから今度はイヤホンをつけて目を瞑った。
「にゅやーッ!授業終わっちゃったじゃないですか!!しかもありがとーでしたってなんですか!?」
「殺せんせー、A聞いてないよ」
「にゅやーッ!」
そんなような会話が聞こえたけど、私は私の世界という音楽の中に没頭していた。
凛香に次体育だよ、と言われたときはものすごい早さで返事をしたため、クラス中に「殺せんせーとの扱いの差!」と言って笑われた。
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作者名:白猫 x他1人 | 作成日時:2015年3月20日 19時