F-side ページ6
北山が突然出て行きしばらく呆然と突っ立っていたが、ハッと我に返ってスマホを取り出す。
「上着も何も持たずになんで…っ」
早く追いかけたいけれど部屋着のまま出て行ってしまった北山を思い出してスマホを操作しながら部屋まで上着を取りに行く。
北山の上着を片手に持ち、スマホから呼出音が鳴ったのを確認して耳にあてればリビングから聞き慣れた音が聞こえ始めた。
「え、まさか…スマホも置いてった…?」
スマホを鳴らしたまま部屋を出てリビングに向かえば北山のスマホはやはりソファーの上でけたたましく鳴り響いている。
小さく舌打ちをしながらソファーに向かおうとすれば、ふと見たテーブルの上に全てラップで覆われた数多くの料理が並んでいる。
「…なにこれ…?まさか北山が全部?」
テーブルの前に移動して料理を眺めればとても二人では食べきれないほどの量だ。
確かバイトは休みだって言ってた…
でも今日は何かの記念日でもない。
強いて言えば……
バレンタイン。
「まさか俺の為に…?」
だとしたら俺はなんて事をしたんだろう…
渉の言うように恋人が居るからとチョコレートなんて受け取るんじゃなかった。
しかも俺は"男同士"だからとバレンタインになんの期待もしていなかった。
北山の性格なら持って帰ってきた俺のチョコレートを「すげー!」なんて言いながら頬張るもんだと思ってた。
北山が上着も羽織らずスマホも置いて家を出て行った理由が今更わかった。
「っ…北山…!」
ソファーの上で鳴り響く北山のスマホを乱暴に取り、仕事から帰ってきたそのままの格好で家を飛び出した。
「北山…っ、ごめんな…」
こんな俺にもう愛想を尽かしたかもしれない。
それでもジッとただ帰りを待っている事なんてもう出来ない。
確信はないものの、北山の働くコンビニに向かって無我夢中で走り出した。
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りんご(プロフ) - こんばんは。突然すみません。お忙しいとは承知ですが、「幸せの途中」の続きをぜひ読みたいです。いつまででも待ってるので、大好きなこの作品を最後まで読みたいです。 (2018年3月30日 22時) (レス) id: ef0e919a50 (このIDを非表示/違反報告)
daimomm(プロフ) - お互いに相手をとても大切に思っているのに、ちょっとしたことが不安に思ったり、自分に自信がなかったり。揺るぎない関係を築くまでにはまだまだいろいろなことがあるのでしょうね。今章もとても楽しみです! (2018年2月13日 20時) (レス) id: 4014bb6c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りこ | 作成日時:2018年2月13日 19時