K-side ページ4
「あー、これ職場の女の子からバレンタインのチョコレートだって」
「……へー、すげー量だな」
落ちた紙袋を藤ヶ谷が拾い俺の前に差し出した。
「北山よかったら食べない？俺甘い物苦手だし…」
見せられた紙袋の中には手作りの物と思われるお菓子や、俺にはとうてい買えない高級ブランドのチョコレートのロゴマークが見える。
それを見せられ差し出されてもとてもじゃないが受け取れない。
ジッと紙袋を見つめていると鼻の奥がツンとして視界が徐々に揺らんでいく。
「…ちょっとごめん。俺コンビニいってくる！ニカと約束してたんだ」
「え！？ちょ、北山！？」
手に持っていた俺のチョコレートは藤ヶ谷の体をすり抜けた時に肩がぶつかり、その拍子に床に落としてしまった。
まずいと思い一度振り返りながらも俺のチョコレートは藤ヶ谷が貰ってきた数多くのチョコレートに紛れている。
あれじゃあどれが俺のものなのかもうわからない…
一瞬藤ヶ谷と目が合ったがそのまま玄関を飛び出し急いでエレベーターに乗ってマンションを出た。
何してんだろ…
あいつがモテないわけがない。
顔もあんなに綺麗に整っているし、正義感も強い。
その辺の女が放っておくわけない。
あいつに愛されすぎて
あいつを愛しすぎて
そんな事、気にも止めなかった。
完全に二人だけの世界だと信じ込んでしまっていた。
「バカじゃん…俺、なにやってんの…」
マンションを飛び出したあと、上着も羽織らずスマホも何も持って出なかった事を後悔した。
「これじゃあ、あの時と同じだな…」
部屋に帰る気にもなれず、とぼとぼ歩きながら高校卒業と共に何も持たずに家を出たあの日の自分と重なった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 729人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「藤北」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんご(プロフ) - こんばんは。突然すみません。お忙しいとは承知ですが、「幸せの途中」の続きをぜひ読みたいです。いつまででも待ってるので、大好きなこの作品を最後まで読みたいです。 (2018年3月30日 22時) (
レス) id: ef0e919a50 (このIDを非表示/違反報告)
daimomm(プロフ) - お互いに相手をとても大切に思っているのに、ちょっとしたことが不安に思ったり、自分に自信がなかったり。揺るぎない関係を築くまでにはまだまだいろいろなことがあるのでしょうね。今章もとても楽しみです！ (2018年2月13日 20時) (レス) id: 4014bb6c4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りこ | 作成日時：2018年2月13日 19時
