多忙な彼と一途な彼 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:57,011 hit

F ページ4

「どうしたの？」

ふわふわとしていた意識が一気に醒める。

「なんでもねえよ」

そう言って腕から逃げようとする北山の手を掴みリビングに連れていく。
ソファに座らせ、向き合わせれば俯向く北山。

「なんで、泣いてたの？」

「・・・」

北山の頬に手を当て、上を向かせれば視線を合わせる。

「北山、」

「・・・飯、行くこと聞いてなかった。」

小さい声で視線を逸らしながら紡がれた言葉は予期せぬものだった。
確かに、連絡入れずに渉と飯に行った。
北山が帰ってくる前に帰ってこれると思ってたから。

「・・・ごめん。」

「しかも、横尾さん、」

そうだ、北山は誰よりもヤキモチを妬いちゃうんだった。

「妬いちゃった？」

小さく頷く北山を抱きしめてやれば弱々しく腕が回ってくる。

「ごめんね、何もないから大丈夫だよ。」

色々心配しているのは俺の方。
こうして感情をちゃんと伝えてくれるのは北山のいいところ。
愛情は伝えられても嫉妬とかそんな黒い感情を伝えられない俺。

机に置かれていた北山の携帯がぶるっと震え画面が光る。

【ニカ：ミツ～今日はありがと！ミツと居ると楽し...】

今しか伝えるタイミングがないと思い、口を開く。

「ニカ、から。」

顔を上げ携帯を見る北山。

「・・・俺だって、妬いちゃうからね？ここ最近、ずっと出かけてるよね。でも北山にも付き合いがあるから言わなかったけど、俺も寂しかったよ。」

目を見開き、少し口が開いている北山の間抜けな顔に笑いがこみ上げる。

「藤ヶ谷は妬いたりしないって思ってた。」

「あまり言わないからね。」

「もっと伝えてくれていいのに。」

「じゃあ、今日はたっぷり伝えさせてもらおうかな。」

ひょいっと、北山を抱き上げベッドに運べば、そのまま覆いかぶさる。

「っちょ、明日朝早いんだぞ、」

「伝えていいって言ったのは、北山でしょ？」

これ以上喋らせないように、口付ける。

「ん、っ」

舌先で唇を割り入れると待ってたかのように絡ませてくる。
漏れる吐息とリップ音が部屋に響き理性を壊していく。

「・・ふ、じがやぁ...、」

甘い声で俺を呼ぶ北山は腰を浮かし、硬くなったそれを強調してくる。

＊＊＊

どれだけ愛し合ったかわからない、時計を見た頃にはもう３時を過ぎていた。
隣ですやすやと寝息を立てる北山。

これから起こることなんて知るはずもなく、俺も眠りについた。