F ページ3
カチカチ、と時計の針が時間を刻む。
北山が出かけてから、数時間経った。
数日間にかけて読んでいた小説も読み終えた。
携帯を開いても愛おしい人からの連絡は来ない。
「はあ」とため息をついていると今日初めて携帯が震えた。
【渉:太輔今日オフ?】
オフである旨を伝えると飯に行こうと誘われ、少しでも気分が晴れるならと誘いに乗る。
夕方まで少し掃除をしたり、洗濯をしたりと家事を済ませておく。
北山の服を洗濯しようとした時に甘い女性の香水の匂いがしたことは気がつかないふりをする。
***
「太輔〜、せっかくのオフなのに呼び出してごめん」
「大丈夫だよ、ちょうど暇だったし」
「なーに、またみっちゃんに放置されてんの?」
迎えに来てくれた渉の車に乗り込み、予約してくれていたであろうお店に向かう。
個室に通され、渉がワインとソフトドリンクを頼む。
「たまーには呑んで発散しな?」
「ありがとうね、渉。」
「さあ、聞かせてもらおうか?みっちゃんのこと」
「・・・・・って感じ。」
最近北山がよく出かけて話せてないこと、好きでいてくれてるかわかんないこと、そして、先程の香水の匂い、のことを話す。
「そうだったんだね、みっちゃん友達多いからな。太輔が不安になる気持ちもわかるけど、みっちゃんなりに太輔のこと気遣ってるところもあるんじゃない?」
「・・・そうかな。」
「話題変えよっか?ごめんね」
ニカッと歯を見せて笑うわた、そのあとは料理も来てお酒も進み他愛のない会話が弾む。
「わたー」
「ほら、帰るよ太輔。」
酒もいい感じ回りふわふわとしてくる意識の中、渉に身をまかせる。
車に乗せられ、外で誰かと通話している渉を横目に未だ賑やかな街を眺める。
「待たせてごめんね、よし帰ろうか。」
車内に響くバラードと渉の歌声・・・。
ここ最近は一人でいたのが多く、今は賑やかな車内に心地良さを感じる。
「・・・太輔をよろしくね」
「こんなところまで悪いね、横尾さん」
そんな会話がどこか遠くで聞こえた気がしたけど幻聴かな。
***
ジメジメとした湿度の高い空気を感じ目を覚ませば見覚えのある部屋。
あれ?いつ家に帰ってきたんだろう。
ベランダの窓が開いている、カーテンがひらりと揺れ愛しい人の存在を確認する。
ふらふらとした足取りで、北山の元へ行き後ろから抱きしめてみる。
吃驚した様子で俺を見る北山の頬には涙の痕があった。
408人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:妖狐 | 作成日時:2019年11月2日 5時