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寂しいんです。F ページ1

【ごめん、今日遅くなる】


そんな連絡が来るのはもう定番化していた。


付き合ってからすぐに同棲を始め、いつも家に帰ってくるのは俺が先だった。
愛嬌があり、人懐っこい性格の北山は、友好関係が広い。


「はあ、寂しいな」


ため息とともに溢れ出た北山への気持ち。
家に帰っても誰もいない。
真っ暗なその部屋は俺の沈んだ気持ちをさらに掻立てる。


ドカッとソファに身体を沈め携帯を開くも、それ以降の連絡はなし。


「あああああ〜、俺本当に愛されてるのか?」

そんな疑問ですら頭によぎる。
コンビニでお弁当を買ったものの食べる気にもならずに
そのままソファで寝てしまっていた。



「っ、まぶし、」



「あー、起きた?ったく、ソファで寝るなって言ったろ?」



いつしか明かりがついていた部屋に、北山が帰ってきたんだと理解する。


「いつ帰ってきてたの?』


「さっき」


ぶっきらぼうに返事する北山はどこか不機嫌そうで。


「藤ヶ谷、飯食ってないだろ?」


なぜか食には厳しい北山。
一人の時はご飯を食べないのが当たり前の時があった。
それが名残でまだ残っている。
いや実際、寂しくて、食べる気にもならなかった、ってのが正解だが。


「眠くて、ごめん」


「今から食え、ほら」


俺が買ってきたお弁当を出される。



「俺風呂入ってくるから、それまでにはたべろよー。」



そう残して浴室に向かう北山の背中を見送り、お弁当のフタを取れば、
一つ、唐揚げを口に運ぶ。


「・・・」


これじゃあ、一人で食べているのと変わらない。
味も感じられず、喉を通ろうとしないそれ。
もういらないな、なんて考えていると、北山が戻ってきた。


「・・・どうした?体調悪いのか?」


あまりにも食べていない俺を見て体調不良を感じたのだろうか。
それならそれで心配してもらえるチャンス?だなんて、気の引き方を考える。


「大丈夫か?」
さらに近づく距離に、少しドキッとしながらも、額に手を当てられる。



「熱はなさそうだけど。」



「少し怠いかも。」



「じゃあ、もう寝るか」


スタスタと寝室へ向かう北山の後についていけば、もう睡眠態勢に入る北山。

「寝るの?」


そんな問いかけは北山の耳に入っているはずもなく、その日は世界を閉じた。

F→



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作者名:妖狐 | 作成日時:2019年11月2日 5時

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