多忙な彼と一途な彼 (ページ8)

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差し出された写真には俺と彼女が二人きりで写っている写真。これどう見ても昨日監督を見送った後、彼女が俺にこの後…と聞いてきた時だ。
油断していた俺も悪いが完全にこれは彼女の指示故だろう。

「じゃあ少しだけ。」

小さく告げると

「失礼致しました、少し藤ヶ谷さん借りますね。お疲れ様でした。」

と再び満面の笑みを作り出し他のメンバーに挨拶をしては一緒に楽屋を出た。

こちらへ、と空き室に連れて行かれる。携帯を触っていると不服そうな顔で俺を見上げてきた。

「藤ヶ谷さんって彼女居るんですか？」

「いいえ」

「じゃあ、私じゃだめですか？」

「申し訳ないですが、そんな風には見れません。」

「じゃあ、これ。週刊誌に回してもいいんですか？」

また先ほどの写真をチラつかせる彼女。

「それ、どうしたんですか？」

「撮ってもらったに決まってるじゃないですかあ？藤ヶ谷さんを脅すために。私藤ヶ谷さんのこと前々から好きだったんですよお～、ドラマの話をいただいて相手が藤ヶ谷さんだと知らされた時、すっごく嬉しかったんですよ？」

先ほどまで甘い声を出してたかと思えば生意気な口調に変わった。

「そうですか。」

「で、これどうします？付き合ってくれるなら今ここでぜーんぶ消しますが。」

「少し、返事を待っていただけませんか？」

「じゃあ、一週間で。それ以上は待ちませんから。後この一週間、できるだけ毎日会いに来ますね♪」

クスッと笑って軽い足取りで部屋を去っていった彼女。
近くにあった椅子に腰掛け、はあとため息をつくと携帯が震えた。