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1st kiss(5) in×ar ページ9

In × Ar age17



“助けてあげられなくて、ごめんね、”



どうして、泣きたいくらい怖かったのは俺なのに、立ってるのがやっとなくらい震えてるのは俺なのに、
そんな俺より泣きそうな顔をしてるんだ





***


前世で一体なにをされたのか、昔から男の人が苦手で、小さいときからいつも1人隅っこで本を読んでる子どもだった。

分厚いメガネともさもさな髪。
アホな子どもの恰好な対象になった俺へのいじめは年々エスカレートして、高校は誰も俺を知らない遠く離れた全寮制のところへ進学した。
のに。



「だいちゃーん」
「っやめろ、ほんとついてくんな!」
「嫌だよ、だいちゃんになんかされたらどうすんの」
「……お前がしてんじゃん」

入学した翌日から、だいちゃんのボディーガードになるとかぬかしだしたこいつ、伊野尾慧は、寮でも隣の部屋、席替えも恐ろしい引きの強さで俺の周りをあて続けている。

だいたいなんだ、“だいちゃん”って。
俺はそんなあだ名許可してないのに。



「なんかイライラしてる?次の授業芸術で俺ら別だもんね〜」
「……お前がいなくて清々する」
「やー、厳しい」
「さっさと音楽行け…」
「俺も書道にすればよかったなぁ〜っ」
「早く行け!」

ヘラヘラと笑う伊野尾を睨みつけて、足早に教室へ向かう。

すっからかんの教室に入れば、袴姿の先生が半紙の用意をしていた。

……女の先生なら、まだ平気。



「有岡くん、いつも早いね」
「……どうも」
「申し訳ないんだけど準備室から半紙取ってきてくれないかな、授業遅れても大丈夫だから」
「はい」

この学校にいるときに、一人で行動できるのは珍しい。

荷物を置いて校舎を飛び出して、準備室があるプレハブに飛び込んだ、まではよかった。





***

じりじりと、脳内で警笛が鳴っている。

どうして、どうしてこうなった。


気が動転していて、なにが起こったかは正直覚えてない。
ただ、なぜか俺の前には四人の臙脂色のネクタイの三年の先輩がいて、俺をゆっくりと追い詰めている。


乱れた息がバレたら負けだ。
精一杯睨みつけるのに四人の歩調は緩まらなくて、いよいよ俺の逃げ場はなくなった。

……最悪だ。

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作者名:濃いピンク | 作成日時:2018年6月18日 21時

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