ep212 ページ48
《12年だ。この12年で僕は何万件もの時間を解決してきた。名探偵として誰も解決出来なかった難事件を》
《この部屋の中にも僕が扶けた警官が何人もいる。……だろ?》
《考えろ。この名探偵がテロの真犯人だとしたら——……
今こんな風に指名手配されるような初歩的なヘマをすると思うか?》
《立場や職業で考えるな。自分の目で見ろ。自分の魂で考えろ。そうすれば判る筈だ。名探偵になるのは本当は簡単だって事が——。》
「A、アンタほんと其れ好きだねェ」
アンの部屋で、先日の乱歩さんの記者会見を繰り返し観る私に与謝野女医が云う。
腰に手を当てて片眉を下げる彼女からは呆れた様な溜息を戴いた。
「云ったって無駄だよ与謝野さん。あと5回は観る心算だ」
菓子片手に明察を披露する乱歩さんの言葉に辟易したのは彼女ではなく、仮初の布団で身を包む花袋さんだった。
「いい加減にしてくれ!先刻からもう10回は聴いてるぞ!」
確かに此の閉鎖空間で再生しようものなら彼等も繰り返し聞かされるのは必至。
しかし
「だって恰好いいじゃないですか。多くの者の目を醒まさせた歴史的な名演説です」
「あーはっはっは!うん、幾らでも再生していいよ!」
すっかり気分を好くした乱歩さんから言質は賜った。
「ゔぅ〜、頭が可笑しくなる!」
これ幸いと再び再生され始めた録画の音声に、花袋さんは唸りながら布団を頭まで被り、蟲の様になって仕舞う。
でも矢張り此れくらいはご容赦願いたい。
《そんな初歩的なミスをすると思うか?》
初めてその言葉を聞いた瞬間、自分の中の血液が熱くなるのを感じた。まるで薪にでも焚べられたかのように沸騰する其れを感じて、熱い筈なのに肌が粟立ったのだ。
探偵社の無実をあまりに明確に照らし出すその言葉。
政府、警察、報道機関……肩書を捨てた彼等の眼に映るのは至って明白でシンプルな事実。
何故それに気付かずにいられたのか自己不信に陥るほどの圧倒的な説得力。
其の言葉でどれほどの人々の目が開かれ、探偵社の面々が此の場に揃うことに繋がったのか——想像すると場違いだろうが胸が高揚した。
「ところで乱歩さん、次の我々の作戦は……?」
「『頁』を奪う為、“ある人”に協力を仰ぐ」
“新たな協力者”——彼の言葉に私の胸はまた躍る。ここからはもう憂慮することなど無いと、そう信じていた。
行先が地獄とも知らずに————。
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ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» お待たせいたしました!待っていてくださってありがとうございます! (10月18日 8時) (レス) id: 577991cf97 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - 待ってましたー!ありがとうございます!これからも応援します!! (10月17日 22時) (レス) @page49 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» コメントありがとうございます!両方楽しんでいただけて何よりです!文スト原作の展開の読めなさに様子見中でした💦お待たせしますが必ず続けますのでお待ちいただけると嬉しいです! (10月3日 23時) (レス) id: a12ab69eab (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - コメント失礼します!貴方様の作品は銀魂の方も読んでいるんですが、どっちも大好きです!こっちの投稿も待ってます! (10月3日 16時) (レス) @page48 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 豆腐プリンさん» コメントありがとうございます!1番だなんて恐れ多いっ!番外編もありがとうございます。両者滞っておりますが原作が溜まってきましたのでそろそろ更新いたします。楽しみに待っていてくださると嬉しいです (2023年2月27日 21時) (レス) id: 2e6ffd9878 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年2月26日 19時