ep183 ページ19
焦燥と疲労の混じった息を吐き出し乍ら夢中で走った。焦る心に引き摺られて進む躯から悲鳴が上がる。
だがそれを気にも留めず走った先に――
《猟犬》と与謝野女医が見えた。
《猟犬》の刀が浮遊し、鋭い軌道で与謝野女医に襲い掛かろうとする。
「与謝野女医!!」
そう叫んだ矢先に私の横を影が過って行った。
それを知覚するのと同時に響く鋭い金属音。
見れば、銀さんが何とか与謝野女医を庇って刃を阻んでいた。
「下がってろバカヤロウ!」
それに続き、立原さんの弾丸が刀を狙う。だがそれを受けても刀には亀裂の一つ入りはしない。
「アンタ達……なんで来た!」
「首領の命令は絶対だからな!」
対抗策の浮かばない苦境の中、刀は広津さんを狙って宙を飛んだ。
「悪の花道……道化の標。驕れる正義の刃如きにこの道譲れる筈もなし」
ガキィン――……
鋭い音と共に『落椿』の餌食になった刀が真っ二つに圧し折られる。
「逃走用の短艇はこの先の暗渠にある。急げ」
広津さんの言葉に私達は頷いた。
まさにその時――
ドッ――……と鈍い音がして振り返れば、折れた刀の切っ先が深々と広津さんの胸に突き立てられていた。
「――広津さんッ!」
思わず駆け寄ろうとした私に「来るなッ!!」と声を荒げる彼。その言葉で一瞬竦んだ足を叱咤し、私は広津さんの前に立ちはだかった。
「……私の異能で如何にかします」
そう云って睨む先は《猟犬》。広津さんが切っ先を抑え込んでいる限り奴に私を攻撃する手段は無い筈。一瞬でも触れれば操作できる。
だが、私の腕をグイと後ろ手に引いて声を押し殺す様に広津さんは云う。
「逃げなさい。自分の立場が判らない貴女ではない筈だ」
「そうです。だからこそです。私にはポートマフィアとその組織員を守る義務があります」
離して下さい――そう云えば彼は一層強く私の腕を握った。
「貴女の存在が割れればポートマフィアの瓦解は勿論のこと、探偵社復活の望みも消える」
「此処で貴方を失えば同じことでしょう!」
無理矢理彼の手を振り払おうとすれば
「銀!!」
広津さんに云われた銀さんが私を退散させようと後ろ手に引き摺って行った。
「私が抑える間に…………行け!!」
「行きませんッ!!」
有らん限りの力で振り払おうとするが、銀さんの腕はビクともしなかった。
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ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» お待たせいたしました!待っていてくださってありがとうございます! (10月18日 8時) (レス) id: 577991cf97 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - 待ってましたー!ありがとうございます!これからも応援します!! (10月17日 22時) (レス) @page49 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» コメントありがとうございます!両方楽しんでいただけて何よりです!文スト原作の展開の読めなさに様子見中でした💦お待たせしますが必ず続けますのでお待ちいただけると嬉しいです! (10月3日 23時) (レス) id: a12ab69eab (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - コメント失礼します!貴方様の作品は銀魂の方も読んでいるんですが、どっちも大好きです!こっちの投稿も待ってます! (10月3日 16時) (レス) @page48 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 豆腐プリンさん» コメントありがとうございます!1番だなんて恐れ多いっ!番外編もありがとうございます。両者滞っておりますが原作が溜まってきましたのでそろそろ更新いたします。楽しみに待っていてくださると嬉しいです (2023年2月27日 21時) (レス) id: 2e6ffd9878 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年2月26日 19時