ep181 ページ17
「賢治!!」
与謝野女医の叫声で我に帰れば
「動くな!」
私達は軍警に取り囲まれていた。
「包囲完了!これより被疑者を確保します」
何故此処に軍警が……?
焦る頭で考えるが、思考は空回りするばかりで中身は真っ白。
……拙い。拙い、拙い。
唯、焦燥だけが脳内を駆け巡って思考を阻む。
兎に角、賢治君の無事を確認しなければと振り向いた瞬間、何処からか飛んできた刀が鈍い音と共に彼の躯を貫いた。
「賢治君!」
その刀に付いた紋章に思わず息を呑む。
……《猟犬》に嗅ぎつけられた。
頭は回るのに躯はまるで動かない。混乱の渦の中で立ち尽くす私達に
「全員逃げろ!取引は罠!フィッツジェラルドは敵側についていた!」
叱咤するように響いた広津さんの声。その言葉に突き動かされたように肺に酸素が入ってくる。
幾分か冷静になった頭を携え、私は辺りを見回した。すると明らかに他の制圧部隊とは異なる出で立ちの男が目に留まる。
「彼奴だ……」
私の呟きに反応して顔を上げる与謝野女医と谷崎さん。
「大丈夫、です……このくらい……」
息も絶え絶えの賢治君の声が響いたその時、男は片手を振り上げ拳を握った。
「う"ぁッ!!」
それに呼応して賢治君の躯を捻り上げていく刀。
背後に回った谷崎さんが刀を抜こうとするも
「抜けない……!」
そんな……馬鹿な……。
思わず息を詰めたその時、「どけ」と声がして広津さんが私達を追いやった。
「『落椿』」
瞬間、弾けるように抜けた刀はカラン……と音を立てて地に転がった。
「マフィアの秘密通路へ逃げる。来い」
襲い来る弾丸に急き立てられ、通路へと向かう昇降機に逃げ込んだ私達はひとまずの息を吐いた。
「くそったれ!だから云っただろ!罠だったんだよ!」
「……今更それを云っても如何にもなりません。拠点の現状は?」
声を荒げる立原さんにそう云って広津さんを見れば
「マフィアの武闘班が応戦しているが防衛線を崩されつつある」
嬉しくない報せばかりが積み重なっていく。
《猟犬》が来れば此処も時間の問題だ。避難通路ごと潰されるだろう。
《猟犬》は個々の異能に加え、超身体能力がある。撃たれても斬られても易々とは倒れないだろう。だが此方はそうもいかない。
与謝野女医の治癒能力、賢治君の強靭な身体能力を以ってしても、まともに勝負して勝てる相手ではない。
私は思わず眉を顰めた。
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ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» お待たせいたしました!待っていてくださってありがとうございます! (10月18日 8時) (レス) id: 577991cf97 (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - 待ってましたー!ありがとうございます!これからも応援します!! (10月17日 22時) (レス) @page49 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 雪だるまさん» コメントありがとうございます!両方楽しんでいただけて何よりです!文スト原作の展開の読めなさに様子見中でした💦お待たせしますが必ず続けますのでお待ちいただけると嬉しいです! (10月3日 23時) (レス) id: a12ab69eab (このIDを非表示/違反報告)
雪だるま - コメント失礼します!貴方様の作品は銀魂の方も読んでいるんですが、どっちも大好きです!こっちの投稿も待ってます! (10月3日 16時) (レス) @page48 id: 34bbee5856 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - 豆腐プリンさん» コメントありがとうございます!1番だなんて恐れ多いっ!番外編もありがとうございます。両者滞っておりますが原作が溜まってきましたのでそろそろ更新いたします。楽しみに待っていてくださると嬉しいです (2023年2月27日 21時) (レス) id: 2e6ffd9878 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2019年2月26日 19時