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ep147 ページ6

私は目の前に(そび)える黒い巨塔を見上げた。
此処がポートマフィアの本拠地――……。

見知らぬヨコハマという街は厭に潮風の強い地だった。微かに香る磯の薫りは初めて知覚する代物だった。


遠く離れた車内から此方を射竦めるような視線を感じ乍ら、私は自動扉の中へと歩を進めた。

あまりに場違いな幼女の姿にその場に居た者達は目を白黒させる。私はその中の一人に駆け寄って袖を引いた。


「ねぇ、私のパパを知らない?忘れ物を届けに来たの」


腑に落ちたように頬を緩ませ、しゃがみ込んだ男は私の肩に手を置いた。


「忘れ物は渡しておくから君は帰り――――……一緒にお父さんを探しに行こうか」


男ははて、と首を傾げた。
彼は私に帰れと伝えたかったのだ。だのに唇を突いて出た言葉は何故か正反対。


「おい、その娘何だ?」

耳打ちしたもう一人の男に彼は笑顔で答える。


「同僚の娘だよ。如何しても駄々を捏ねるから父親に会わせてさっさと帰らせるさ」


彼は優しく私の手を取って最上階へと通じる昇降機に乗った。
彼の手はじっとりと汗に塗れていた。いくら対象の躯を操ると(いえど)も恐怖による精神性発汗までは操れない。


そう、やっと彼は理解したのだ。自分の躯が年端もいかぬ眼前の少女によって操られていることに。


私は瞳に恐怖を渦巻かせた彼を見上げ、無表情で云う。


「ありがとう、お兄さん」




 




心地好い音がして昇降機が停止する。
そして扉がゆっくりと開いたその瞬間――――

先導を果たしていたその男の躯が衝撃に跳ね、びくりびくりと歪に痙攣した。


鼻を掠めるのは硝煙の匂い。どさりと男が倒れて開けた視界には同じような黒服の男達の銃口があった。

露わになった幼女の姿に彼等は一旦思考を停止させた。
私は思う――こういう時に人間はつくづく不便だと。本能的に眼前の状況を理解しようと脳を働かせて仕舞う。何も考えず引き金を引けば善いのに、そうはできない。


そんな事に思慮を巡らせ乍ら、私は眼下に伏せた男の屍を足で転がして云った。


「お兄さん、眠るには未だ早い。仕事は此処からだよ」




 

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ギラッフェ(プロフ) - こゝろさん» はじめまして。コメントありがとうございます!応援とっても嬉しいです!これからも宜しくお願いします。 (2018年12月23日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
こゝろ - とっても面白いですね!これからも頑張って下さい!更新楽しみにしております!…あの、ドストエフスキーの一人称は「私」ではなく『ぼく』ではないでしょうか? (2018年12月23日 10時) (レス) id: 383b340c0d (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます。お読みになりましたか!そうですよね、共有せずにはいられないほど衝撃的ですよね……。そろそろ更新しようと考えておりますので是非お待ち下さい。 (2018年12月17日 20時) (レス) id: 78a130b852 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 新刊読みました!!ヤバかったですね??この先の小説の続きも気になります!! (2018年12月17日 0時) (レス) id: 5a88057d9b (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - あやなさん、はじめまして。思いの込もったコメントをありがとうございます。こんなにも熱い応援をしてくださる方がいるんだと思うと胸が一杯になります。 銀魂の方も読んでくださってるんですね!本当に嬉しいです。これからも両作共々宜しくお願いします。 (2018年11月30日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年8月14日 9時

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