ep171 ページ38
―no side―
「やめろッ!!」
弾かれるように身を起こしたAの叫びに地下室の探偵社員が一斉に振り向く。荒い息を繰り返し、汗を流す彼女に彼等は並々ならぬものを感じ取った。
「…………A……大丈夫かい?」
そう呼び掛けるも応えのないAに与謝野が触れた
その瞬間――……
彼女は凍て付いたように膠着する。
Aに触れた侭、眼を開いて遠くを見詰め続ける。
「――……ッ!」
そして突然、はっとしたようにAから手を離し、覚束無い足取りでAから離れた。
手を震わせながら酷く顔を歪める与謝野を不審に思った谷崎が立ち上がる。
「……与謝野女医……?」
伺うように呼び掛けられたその声に与謝野はふと我に帰り、後退し続けていた足を止めた。
一方、その一部始終を静観していたAは思慮の末――……
……と云うより、もはや直感的に一つの答えに辿り着く。
自分と同じく、与謝野にも“記憶”が見えたのだと。彼女自身が与謝野の過去を追体験したように与謝野も自分の記憶に触れたのだと。
Aは自分が見た“記憶”があまり心地の善いものではなく、寧ろ悪夢のようであったことを思い返す。
ならば、与謝野が見た“記憶”も――――……
そこまで考えてAは唇の隙間から笑いを漏らす。そして自嘲にも見えるその笑みを湛えながら問うた。
「屍が乱舞する様でも見えましたか……?」
その問いに唇を噛み締めた与謝野。それを見てAはゆっくりと息を吐き出し、寝かされていたソファの上で項垂れた。
「…………恐らく私の異能が原因です……」
すみません――……そんな掻き消えそうな声と共に、彼女の黒髪が肩を伝ってするりと滑り落ちる。
その黒髪の先がどんな表情なのか――。与謝野達には知る由も無かった。
「……妾は別に聞く必要も無いと思ってたんだよ。とっくに知ってるだろう太宰も敢えては云わなかったしね」
静まり返った地下室に与謝野の声が響く。
「でもこれじゃあそう云っても居られない。
A……アンタ、一体どんな異能持ってんだい」
321人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ギラッフェ(プロフ) - こゝろさん» はじめまして。コメントありがとうございます!応援とっても嬉しいです!これからも宜しくお願いします。 (2018年12月23日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
こゝろ - とっても面白いですね!これからも頑張って下さい!更新楽しみにしております!…あの、ドストエフスキーの一人称は「私」ではなく『ぼく』ではないでしょうか? (2018年12月23日 10時) (レス) id: 383b340c0d (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます。お読みになりましたか!そうですよね、共有せずにはいられないほど衝撃的ですよね……。そろそろ更新しようと考えておりますので是非お待ち下さい。 (2018年12月17日 20時) (レス) id: 78a130b852 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 新刊読みました!!ヤバかったですね??この先の小説の続きも気になります!! (2018年12月17日 0時) (レス) id: 5a88057d9b (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - あやなさん、はじめまして。思いの込もったコメントをありがとうございます。こんなにも熱い応援をしてくださる方がいるんだと思うと胸が一杯になります。 銀魂の方も読んでくださってるんですね!本当に嬉しいです。これからも両作共々宜しくお願いします。 (2018年11月30日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年8月14日 9時