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ep168 ページ27

打開策――……。
そう云ってはみるものの現時点で探偵社と共闘することは危険でしかないのも事実。
《猟犬》の追跡を躱しつつ《天人五衰》を相手する……。そんな状況になれば此方も探偵社も人死は避けられない。

国木田さんの時のように、目の前で命が絶たれる瞬間を見るのは惨い。



「……矢張りフョードルを直接潰すしか……」

ふと溢れた呟きに敦君が気落ちした声で返す。


「無理だ。僕達は彼奴に指一本触れられない」

「何故?」

「彼奴は今、異能刑務所のムルソーに――……」


ブツッ――――……




途切れた通信。
振り返れば断絶したコードを片手に立つ首領が居た。


「君は自分のやっていることがどれほど危険か理解していない。
探偵社だけでなくポートマフィアをも危険に晒し……そこまでして何がしたい……?」



だが最早、首領の言葉は私の耳に届いていなかった。

その時、私は全身に電気が走ったような衝撃に襲われ乍ら怒涛の渦の中に居たのだ。

表示装置の警告文……暗殺の阻止……ムルソー……

先刻までの混沌が嘘のように、凡てのピースが嵌まっていく。


そう、もう一人いるじゃあないか。敦君が『神の目(アイズオブゴッド)』を頼りにフィッツジェラルドの元を訪れる。それを予期できる人間が――……



 




「ふふふっ、ふははははははははは!」


思わず溢れた笑いを堪え切れず、私は暗い通信室の天井を仰いだ。


狭い部屋に反響した笑い声が歪に響いて木霊する。

全身の血液が上昇して脳が熱く煮え滾る。
耳鳴りがする。

安堵か、興奮か……訳も判らず熱い涙が眼に浮かぶ。
怪我の痛みは嘘のように消え失せ、寒いのか暑いのかも判らないような錯綜の渦に呑まれる。


私は唯、笑い続けた。



太宰さんは凡て読んでいた。
読んだ上で自らムルソーに囚われ、フョードルに真っ向勝負を挑んだのだ。
如何に手管を知り、外部と通信を取るのかは判らない。しかしフョードルに出来て、彼に出来ない訳はないのだ。




「未だだ……未だ何も終わっちゃいない」



私は机上に固めた拳を振り下ろした。






 






「勝負だ、フョードル……」





 

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ギラッフェ(プロフ) - こゝろさん» はじめまして。コメントありがとうございます!応援とっても嬉しいです!これからも宜しくお願いします。 (2018年12月23日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
こゝろ - とっても面白いですね!これからも頑張って下さい!更新楽しみにしております!…あの、ドストエフスキーの一人称は「私」ではなく『ぼく』ではないでしょうか? (2018年12月23日 10時) (レス) id: 383b340c0d (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます。お読みになりましたか!そうですよね、共有せずにはいられないほど衝撃的ですよね……。そろそろ更新しようと考えておりますので是非お待ち下さい。 (2018年12月17日 20時) (レス) id: 78a130b852 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 新刊読みました!!ヤバかったですね??この先の小説の続きも気になります!! (2018年12月17日 0時) (レス) id: 5a88057d9b (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - あやなさん、はじめまして。思いの込もったコメントをありがとうございます。こんなにも熱い応援をしてくださる方がいるんだと思うと胸が一杯になります。 銀魂の方も読んでくださってるんですね!本当に嬉しいです。これからも両作共々宜しくお願いします。 (2018年11月30日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年8月14日 9時

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