ep165 ページ24
私は首領の足音が遠ざかったのを確認してから関節を外し、するりと手錠から手を抜いた。
痛む手首を緩やかに解す。
何故無意味だと判っていて態々手錠をかけるのだろうか……。牽制球……?
そんなことを思い乍ら、立ち上がって格子を揺さぶるが勿論、ビクともしない。
例の如く人影は無し。
「駄目か……」
溜息を吐いて再び牢の中で寝転がった。
この場合、脱出はさておき現状を整理することが肝要だろう。
私は静かに目を瞑った。
天人五衰……『本』の一頁……《猟犬》の投入
太宰治の逮捕……“死の天使”――与謝野晶子
国木田独歩の自爆……行方不明の福沢諭吉、江戸川乱歩
別
脳裏に浮かんではよぎり、消えていく言葉の断片。
暫くして瞼を開けた。
そうだ、そう云えば――……
探偵社に起きたことの中で引っ掛かったことがいくつかあった。その最たるものは太宰さんの経歴がふらりと蘇ったこと。
否、太宰さんだけではない。与謝野女医や鏡花ちゃんの経歴もだ。
特に太宰さんと鏡花ちゃんの経歴は坂口さんが洗った筈。あの坂口さんに限ってぬかった、ということはないだろう。
ならば何故、今更彼等の経歴が明るみに出たのか。
一番納得がいくのは“異能が使われた”と解釈することだが……
果たして、そんな異能あっただろうか……?
真っ暗な天井を見上げて思慮を巡らせる。
記録を蘇らせる異能……
記録を、蘇らせる…………
蘇らせ――――……
「――……っあ!」
私は思わず声を上げてバッと躯を起こした。
居るじゃあないか。
蘇らすのではなく、逆に“消す”異能が……
「小栗虫太郎」
フョードルによって捕縛から解放された彼だ。
確か、乱歩さんと真っ向勝負したことがあった筈。
その後は天人五衰に消されたと聞いたが、もし連行され、その異能が逆転して使われているとしたら――……
「……可能性はある」
そして如何に探し出すかは最早一択。
私は床に手をつき、立ち上がった。
「フィッツジェラルド」
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ギラッフェ(プロフ) - こゝろさん» はじめまして。コメントありがとうございます!応援とっても嬉しいです!これからも宜しくお願いします。 (2018年12月23日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
こゝろ - とっても面白いですね!これからも頑張って下さい!更新楽しみにしております!…あの、ドストエフスキーの一人称は「私」ではなく『ぼく』ではないでしょうか? (2018年12月23日 10時) (レス) id: 383b340c0d (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます。お読みになりましたか!そうですよね、共有せずにはいられないほど衝撃的ですよね……。そろそろ更新しようと考えておりますので是非お待ち下さい。 (2018年12月17日 20時) (レス) id: 78a130b852 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 新刊読みました!!ヤバかったですね??この先の小説の続きも気になります!! (2018年12月17日 0時) (レス) id: 5a88057d9b (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - あやなさん、はじめまして。思いの込もったコメントをありがとうございます。こんなにも熱い応援をしてくださる方がいるんだと思うと胸が一杯になります。 銀魂の方も読んでくださってるんですね!本当に嬉しいです。これからも両作共々宜しくお願いします。 (2018年11月30日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ギラッフェ | 作成日時:2018年8月14日 9時