ep154 ページ13
まるで昨日のように思い出されるあの日の出来事。つい先刻まで喪失していたとは思えないほど、克明に覚えている。
私は取り戻した記憶の洗いざらいを語った。
そして――――
「妙だ……」
「妙だね」
「妙ですよね」
私達の意見は合致する。
「あの魔人が君の謀反を予見できなかったなんて有り得ないだろう」
“私の行動など手に取るように判る”と云ったフョードルがみすみす手駒を奪い取られるわけはないのだ。
つまり、これはその逆――――
「12年前の君の謀反さえ魔人にとっては計画の一部だった」
……そう、彼は『本』を手に入れる為にあの時私を態と手放した。そして12年後の今……改めて私を手駒にしようとしている。
壮大すぎる脚本。考えるだけで気が遠くなる。
私が“最終兵器”としてポートマフィアに秘匿されたのも、探偵社との共同戦線で再びフョードルと会い見えたことも、こうして記憶を取り戻したことも――……
凡て、彼には12年前のあの日から判っていたことだった……。
そう思うと手先が急に冷えていく。
「異能の正体は……？」
私の気を紛らわそうと気を遣ったであろう乱歩さんの問いに私は頸を振った。
「フョードルが私に異能を明かしたことはありませんでした」
俯いた私の肩に手を置いた太宰さん。
「今日はこのくらいにしておこう。さぁ、拠点まで送るよ」
私は帰路に着いた。
静かな車内でエンジンの音だけが響く。私は窓の外で道行く人々を眺めていた。
「中也に云ってあげてね」
ハンドルを握り正面を見据えた侭、ふと太宰さんは云った。
「……読心術ですか……？」
事実、私は迷っていたのだ。記憶が戻った事を中原幹部に伝えるべきか否か。
彼は自身の記憶が欠落している原因を知りながらその空白を埋めることは出来ないと、知っているように見えた。
「欠けた記憶を埋められない人に対して、私が記憶を取り戻したと伝えるのは残酷ではないですか……？」
残されるのはきっと行き場の無い孤独感だ。
尋ねた私に太宰さんは溜息を吐く。
「残念ながらそんなことで凹むような男じゃないんだよね……中也は」
そう云って窓枠に肘をつき、横眼にニヤリとする太宰さん。癪なほど絵になる彼を凝視し乍ら私は問う。
「……本当は仲善いんですよね」
「本気で云ってる？」
先刻までの絵になる笑顔は何処へやら。露骨に厭な顔をする彼に笑いが漏れた。
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ギラッフェ(プロフ) - こゝろさん» はじめまして。コメントありがとうございます！応援とっても嬉しいです！これからも宜しくお願いします。 (2018年12月23日 17時) (
レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
こゝろ - とっても面白いですね！これからも頑張って下さい！更新楽しみにしております！…あの、ドストエフスキーの一人称は「私」ではなく『ぼく』ではないでしょうか？ (2018年12月23日 10時) (レス) id: 383b340c0d (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - かなさん» コメントありがとうございます。お読みになりましたか！そうですよね、共有せずにはいられないほど衝撃的ですよね……。そろそろ更新しようと考えておりますので是非お待ち下さい。 (2018年12月17日 20時) (レス) id: 78a130b852 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 新刊読みました！！ヤバかったですね？？この先の小説の続きも気になります！！ (2018年12月17日 0時) (レス) id: 5a88057d9b (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - あやなさん、はじめまして。思いの込もったコメントをありがとうございます。こんなにも熱い応援をしてくださる方がいるんだと思うと胸が一杯になります。 銀魂の方も読んでくださってるんですね！本当に嬉しいです。これからも両作共々宜しくお願いします。 (2018年11月30日 17時) (レス) id: b3908f46f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ギラッフェ
| 作成日時：2018年8月14日 9時
