happIness*2-5 ページ5
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その日の夜、彼が朝提示した時間を少し過ぎたころ、
メッセージが届いた。
想像していた通りの内容だった。
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“ごめん、収録長引きそうで遅くなる“
“今日は先に寝てて。おやすみ”
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知っていた、嘘だって。
だけど、私はこの嘘を暴くことも、
そんなのひどいと駄々をこねることもできない。
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浮気？
…まさか、それはない。
だって、彼は遅くなっても毎日この家に帰ってくる。
他に女の人がいるのなら、1晩家を空けるなんて普通にあるだろう。
でも、彼なら、バレないように上手くやるのだろうか。
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【翔くんが私に嘘をついた。いやだな。
別に、誰と会っていたって怒らないのに。
浮気ではないと思う、わからないけど、なんとなく。
最近、ひとりで眠ることが多い。さみしいな。】
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黒いノートを開いて、思いつくままに文章を書きなぐる。
ご飯を食べる気にもならなくて、
作っていた夕食を冷蔵庫にしまった後、
眠ってしまおうと思って寝室に足を踏み入れた。
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その瞬間、ぶわ、と気持ちの波が襲ってきて、
扉に掛けている手が震えた。
そっと後ずさりをして、自分の部屋に逃げ込む。
暗くて、少しひんやりしているその部屋は、あまり居心地が良い場所ではないはずなのに、
一人で眠りにつくには丁度いい場所だった。
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冷たいベッドにもぐりこんで、ぎゅ、と両腕で自分を抱きしめて
小さくなって目をつぶる。
気を緩めたら、泣いてしまいそうな夜だった。
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＿
真っ白な部屋にいる。
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床に座っている私は、真っ黒なワンピースを着ていた。
私は膝を抱えてそこに顔を埋めて目を閉じる。
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コツコツ、とどこからか足音が聞こえて、私はそっと顔を上げた。
遠くに見える人影に、私は誰か分かってしまって、思わずその場に立ち上がる。
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「、！」
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名前を呼ぼうと息を吸って吐いたのに、
それは叶わなかった。…声が出ない。
キョロキョロと遠くの彼はあたりを見渡していて、
私を見つけられなかった白い服を着た翔くんはくるりと踵を返す。
追いかけなきゃ、はやく、彼のことを。
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「、！」
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え、うそでしょ。
私の足首には、鎖。立ち上がっても、前に進むことが、できない。
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白い服を着た彼の背中が、どんどん小さくなっていく。
手を伸ばしても、
もう、届かなかった。
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