happIness*2-24 ページ24
(翔side)
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「かわいいわよね、工藤さん」
「……」
「男がほっとかないって感じ」
「そう？」
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ぺらりと、紙を捲る。
文字の羅列を目で追う、数日前に目の前の彼女から貰った資料にも
同じようなことが書いてあったなと、
頭の中の引き出しを探った。
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「モテそうだし、彼氏もいるんじゃない？」
「…そうかもね」
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別に信用していないわけじゃないけど、
Aと何度か撮られてから、
関係を他言することはやめた。
まぁ、昔も誰彼構わず言っていたわけではないけれど。
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「翔、元カレなんでしょ？」
「、」
「あは、怒った(笑)」
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一部の週刊誌のおかげで、
俺とAは、一度付き合って、別れたことになっていて、
それを信じている人も多い。
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「違うから」
「そうなの？付き合ってたんだと思ってた」
「ないだろ、メンバーは」
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嘘で固める。
外からの作り話で、彼女が溺れることがないように。
真実によく似た嘘で、彼女が傷つくことがないように。
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「好きになったこととかないの？」
「ない」
「一線越えたことも？」
「だからないって、ただのメンバー。それ以上もそれ以下もない」
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健全なメンバーって、そういうことだろう。
あの時、俺たち5人は、同じ意味でAのことが好きだったけど、
いつの間にか、それも過去になっていた。
あの後4人に彼女ができたのも知っている、
あの気持ちを抱えて止まっているのは、俺だけだ。
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「ふーん」
「なに、」
「いや？だだ興味があっただけ」
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涼しい顔でそう言われて、
俺は言い返すのをやめた。
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「帰るわ、」
「そう？」
「明日も早いし。これ、ありがと」
「どういたしまして」
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にこりと笑う彼女は、ゆらりとピアスを揺らすように
頭を少し傾げた。
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「また資料とか探しておく、」
「助かる」
「はやく良くなるといいわね、工藤さん」
「あぁ、」
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真面目な顔をした彼女は、
すっかり"精神科医"の顔をしていた。
「涼子も気をつけて帰って」と、立ち上がった俺にひらひらと手を振る彼女に告げて、
俺は店を後にした。
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