happIness*2-23 ページ23
(翔side)
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「翔、優しいね」
「なにが？」
「仕事仲間でしょ？普通ここまで時間と労力割かないって」
「……そうかな」
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そうだろうか。
メンバーそれぞれ気にしているけど、
本人に直接アプローチしないのは、
彼女の性格をしっかりと把握しているからだ。
絶対に気にしてしまうから。
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「診察した訳じゃないからはっきりとは言えないけどさぁ」
「……」
「ここまで症状が改善しないって、結構重度だよ」
「…だよなぁ、」
「カウンセリング受けてるんでしょ？それでこれって……主治医代えたら？相性良くないんじゃない？」
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それは無理だろうと心のなかで思う。
帝都大は事務所と繋がりのある病院だ、
Aがそこに通院しているのも、事務所側が彼女の状態を
把握するためだ、転院するのも主治医を代えるのも難しいだろう。
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「わたし診るのに」
「あー……そこまで口出しできねーわ」
「まぁそっか、仕事仲間ってだけだもんね」
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なんてことのないように呟かれたその言葉に、
俺はあえて何の反応もしなかった。
.
「こういうのって、ほんと難しくて。人それぞれな部分が大きいから一概には言えないんどけど」
「うん」
「人から大切にされたりする経験？みたいなのが結構だいじだったりするんだよね」
「精神的な部分の話ってこと？」
「まぁ、簡単に言ったらそういうこと」
.
人に求められるこの職業で、
俺もAも、諦めたものがたくさんある。
彼女は色んな人に大切にされているけど、
それと同時に敵意や憎悪、深い悲しみや絶望に誰よりも触れてきた人だ。
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「彼氏いないの？工藤さんって」
「さぁ……どうだろう」
「知らないの？」
「そういう話しないから、女の子だし」
「ふぅん」
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あまり興味がないように返事を返した彼女は、
グラスを傾けて中身を煽る。
薄い唇から響く音が空気を揺らして言葉を紡ぐ。
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「彼氏がいるなら、彼の働きが結構重要なんだけど」
「どういうこと？」
「好きな人に好きって言われたり、大切にされているって感じると、自分の価値が上がるでしょう？」
「自己肯定感ってやつ？」
「まぁ、うん。必要とされてる、って自認するのって、結構大切」
「なるほどなぁ」
.
そう思う反面、そんな些細なことで変わるんだろうかとも思う。
好きだと、大切だと伝えるくらい、いくらでもしてやるのに。
そのくらいで彼女の声が戻ってくるのなら。
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