happIness*2-1 ページ1
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声は出ない。戻ってこない。
はくはくと口を動かすだけの行為にも、もう慣れてきてしまっていた。
彼の帰りは、日に日に遅くなっていく…私のせいだった。
私が穴をあけた分の仕事の埋め合わせはメンバーの誰かに割り振られて、
アルバムもコンサートも中止になって。
頭を抱えたって、自己嫌悪に陥ったって、何も変わらないし戻ってもこない。
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ぼんやりとテレビの中で動く映像を眺めていた。
見慣れた顔が並んでいて、ああ、と思った。
5人が横一列に並んで、お揃いの色の服を着て、マイクを片手に談笑している、
スケジュールを確認しなくたって分かる、私だっていたはずの場所だ。
番組改編の時期の大型の音楽番組。
当たり前のように、私たちはゲストだったのだ。
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何度も聞いたイントロが流れる、
歌詞を見なくたって歌える、私がどのパートを歌うのかも、振りだって。
…5人が歌う、5人でいるのが当たり前みたいに。
5人が笑う、いつも、そうであったかのように。
手が震えた、ああ、なんだ、私がいなくたって。
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ここ数日、そんなことばかり考えていた。
私がいなくちゃいけない理由って何だろう、
だって私が抜けても、嵐の番組は続くし、こうやって5人で歌うことだってできる。
ミュージカルは他の人がその役をやる、
私がいなくたって、この世界は成り立つ、成り立ってしまう。
まるで最初から“そう”であったかのように。
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今日は、のんびり過ごしていました。
ご飯を作って、テレビを見ました。
音楽番組に、私の仲間が出ていて、すごくうれしかったです。
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他人に見せる記録に、今日も嘘を並べた。
丁寧に書き綴ったそれは、子どもが書いた文章のように陳腐で、
こんなものに、一切の意味なんてないのに。
本音を話さない患者なんて、担当医からしたら相当厄介だろう。
だけど、リスクを冒してまで本音を第三者に晒して、なんだっていうんだろう、
私は声を取り戻したいだけなのに。
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【今日も声が出ない。翔くんが帰ってくる時間が遅くなって、
私がいない嵐がテレビに出ていて、当たり前みたいに笑ってる。
居場所がなくなってしまうのが怖い、
もとに戻った時、私が立つ場所は残ってるのかな。】
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“ただいま”と声がする、
ふと時計を見れば、随分と時間がたっていて、
5人を映していたはずの映像は、知らない間にニュースに切り替わっていた。
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