happIness*1-11 ページ11
(翔side)
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もう、付き合ってどのくらいかを数えるのが億劫なほど、
長い時間一緒にいる。
記念日的なものに、彼女は少し疎くて、
2週間前までは覚えているくせに、当日になったらすっぽりと頭から抜けていたりする。
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記念日を数えるには、少し面倒な付き合い方をしてしまったけど、
Aは一度も聞いて来ないので、
一応、2回目から、で数えるようにはしているけれど、
たぶん彼女にどうするか聞いても、あまり興味を示さずに「どっちでもいい」と言うだろう。
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そういう所を、俺はすごく好ましく思っているし、
Aがどっちでもいいなら、どっちでもいいか、と納得してしまうはずだ。
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時間が過ぎていく中で、彼女は「声」に出して伝えることができるようになった。
喜怒哀楽がハッキリしているAは、
表情や仕草にそれらがあらわれることが多い。
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今まではそういうものを、読み取って接することが多かった。
隠すのが上手な彼女は、何もないみたいに笑うのが得意で、
だから俺は、それが溢れて止まらなくなる前に、
Aが本当に欲しいもの、望んでいるものを与える。
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遠慮と不安と後ろめたさと。
そんな不安定なものたちの上でゆらゆらと揺れていたAは、
ここ数年で自分の気持ちと、してほしいこと、を
自分の声で、言葉で伝えてくる。
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例えば、寂しいとか不安だとか、今拗ねてるとか。
寂しいから構ってほしい、不安だから話を聞いてほしい、
今拗ねているから機嫌を取ってほしい。
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そんなことを、言葉と態度で伝えてくるAを見ると、
なんだかとても嬉しくて、
ついつい甘やかしてしまう。
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6人でいるときは、それも他のメンバーの仕事になってしまうから、
2人のときだけ。
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そんな些細なやり取りと、
小さな幸せを見つける毎日が当たり前になってしまって、
きっとこれからもずっと、一緒にいるんだろうと
そんな奇跡を疑いもしない。
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静かな部屋を誤魔化すようにテレビをつけて、
キッチンに向かい冷蔵庫の扉を開くと、
プラスチックのボウルに、レタスとトマト、きゅうりがサラダとして入っていて、
その量に思わず苦笑する。
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「…緑か」
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今日はAが生放送のラジオの担当だったから、
もう少ししたら帰って来るだろう、
とそこから水だけ取りだして、
彼女の帰宅を大人しく待つことにした。
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