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第76話(坂口安吾side) ページ40

ポートマフィアの首領が得体の知れない異能者を組織に迎え入れた。

その話が耳に入ったのは龍頭抗争が終結した少し後。
漸く彼の惨劇の爪痕が薄れ始めた頃のこと。

当時内情を探る密偵としてマフィアに潜り込んでいた僕に、件の人物についても調べるよう上が指示を下したのは至極当然の流れと言えた。

手掛かりのひとつだって無いのに、無茶を言ってくれる。
そう独りごちたところで、いち構成員に過ぎない僕には拒む術などある筈もなく。


「ええっと、……此処で合ってる?」
難航しそうだ、と息を吐いた矢先。
ポートマフィア直轄の施設を訪れたのは、把握する組織構成図に名を残さない人物。
僕の新たな調査対象。宵羽真理(よいばねまこと)その人だった。

彼について得られた情報は少ない。
名前。
直に目にした容姿。
大まかな業務傾向。
せいぜい知り得たのはその程度か。

仕事柄、相手方との駆け引きは決して少なくない身だ。
僕自身が偽りを述べることだって多々ある。
だけど対峙した彼の言葉から嘘の気配は感じられなかった。
あるのは当人さえ手を上げる謎ばかり。

そう、彼には謎が多いのだ。
経歴も。家族構成も。異能力も。
全てが「わからない」。

宵羽真理という人間は公的な記録に存在しない。
こんな界隈だ、そういう人物は多い訳ではないが決して少ないとも言えない。

その中においても尚、彼の異質さは際立っていた。
この街に現れる前の彼の足取りを誰も知らない。
記録を消した痕跡さえ、見つけられない。

それはまるで、無から突然生まれ出ででもした様な。

業務の外で年相応に笑う少年からは及びもつかぬ間隙が、ようやっと得た雀の涙ほどの収穫を繋ぎ合わせた所で埋められよう訳もない。
さりとて、無いものを幾ら探しても(いたずら)な消耗を招くだけであることは明白。

はっきり言って、攻めあぐねていた。

程なく忙しさを増した本命の任務に専念している間に。
彼が忽然と組織から姿を消したという噂を誰からともなく聞くようになった。

その彼が。
今こうして僕の目の前に居るのは果たして僥倖か、或いは。

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作品ジャンル:アニメ
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fiest(フィエスト)(プロフ) - 雨宮さん» お返事遅れましてすみません。雨宮さん、コメントありがとうございます。まだまだ続きますので、もしよろしければ気長にお付き合いください。 (2022年12月25日 23時) (レス) id: ecf63f7120 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮 - 面白いです。これからも楽しみにしています。 (2022年11月15日 10時) (レス) @page41 id: 27a6582a0d (このIDを非表示/違反報告)
fiest(フィエスト)(プロフ) - ゆめのさん» ゆめのさん、コメントありがとうございます。大変な亀更新ですがちまちま作っていくつもりですので良ければお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年4月25日 21時) (レス) id: 1f83ad1ac9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月17日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
fiest(フィエスト)(プロフ) - 怪盗MOON さん» MOONさん、再度感想を寄せてくださりありがとうございます。己の好みに従った結果こうなっちゃいました……wちまちま更新してますのでゆっくり待って頂ければ幸いです! (2020年1月6日 0時) (レス) id: 1f83ad1ac9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fiest(フィエスト) x他1人 | 作成日時:2018年6月5日 18時

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