第54話(太宰治side) ページ14
中也の『汚濁』により敵は全滅。
気絶した中也を背負った真理と本部への帰路についていた。
「…………今回の任務さ」
中也の寝息だけが聞こえる中、不意に真理が口を開く。
「二人だけで充分だったと思うんだ」
純粋な賞賛と僅かな悔しさが滲んだ声音。
応えなど求めてはいないのか口調の割にその声は囁く様に小さい。
「……きっとオレが居なくても任務は果たされてた」
「……」
何故かはわからない。
ただ、兎に角この先の言葉を言わせてはいけない、そんな気がした。
「なのに、如何して首領は」
「真理」
彼女の言葉を遮り、頭を横に振る。
目を丸くした真理だったが少しの沈黙の後、ふっとその口元を歪めた。
「………………ありがとな、治」
聞き取れるかどうかという程の呟き。
先程まで俯いていたその顔にもう
「さて、何の事だか」
月明かりの下、隣を歩く真理を眺める。
前髪の間から覗く瞳は吸い込まれる様な宵闇色。
──真理は綺麗だ、いっそ不自然な程に。
人間の瞳という物はそうそう誤魔化しの効くものじゃない。
表情に現れない程の僅かな感情も、光も、闇も、表に伝えてしまう。
殺人なんて以ての外だ。
表面は明るく見せられても必ず何処かに影が現れる。
中也や姐さんは勿論、私や首領だって決して例外ではない。
だが、真理は違う。
真理の瞳には影が無い。
現に今も、組織一つ滅ぼしたばかりだと言うのにその瞳は何処までも澄み切っていて透明そのものだ。
…………訓練でどうにかなる事じゃない、天性のモノ。
それが理解出来てしまうからこそ、かえって恐ろしさを覚える。
「マフィアになる為に生まれてきた」なんて良く言われる私だけど、それなら真理は────。
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fiest(フィエスト)(プロフ) - 雨宮さん» お返事遅れましてすみません。雨宮さん、コメントありがとうございます。まだまだ続きますので、もしよろしければ気長にお付き合いください。 (2022年12月25日 23時) (レス) id: ecf63f7120 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮 - 面白いです。これからも楽しみにしています。 (2022年11月15日 10時) (レス) @page41 id: 27a6582a0d (このIDを非表示/違反報告)
fiest(フィエスト)(プロフ) - ゆめのさん» ゆめのさん、コメントありがとうございます。大変な亀更新ですがちまちま作っていくつもりですので良ければお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年4月25日 21時) (レス) id: 1f83ad1ac9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月17日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
fiest(フィエスト)(プロフ) - 怪盗MOON さん» MOONさん、再度感想を寄せてくださりありがとうございます。己の好みに従った結果こうなっちゃいました……wちまちま更新してますのでゆっくり待って頂ければ幸いです! (2020年1月6日 0時) (レス) id: 1f83ad1ac9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fiest(フィエスト) x他1人 | 作成日時:2018年6月5日 18時