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「炊いてないのは？」
「ありますよ。小さい土鍋借りてきますね」
「あ、野宿用の土鍋あるから大丈夫」
背負っていた風呂敷から両手のひらに乗るほどの土鍋を出し、お勝手で米を一合半貰って研ぐと浸水を待つ間にお土産を出した。
「この前街に降りたら佃煮売ってたから。
生姜の佃煮好きだったでしょう？」
「はい。心遣いありがとうございます」
「お米炊けたら生姜の佃煮のおにぎりにしようか」
蝶屋敷の子達やカナヲの話、柱のメンバーの話をしているうちに浸水は終わり、米が炊き上がった。
炊きたてをふんわりと握り、竹皮で包むと竹の香りがほんのりうつる。
「いただきます」
「いただきます」
手を合わせ、おにぎりをかじるとしのぶの表情が緩んだ。
「お米おいしいね」
「夜食はやっぱりおにぎりですね」
緑茶を啜り、おにぎりを食べているとしのぶはぽつんと呟いた。
「姉さんのようになりたい。でも心の何処かで鬼を嫌悪してしまう。私は、我儘なんでしょうか」
ごくりと緑茶を飲み込んでからAは答えた。
「我儘じゃないよ。しのぶちゃんはしのぶちゃんだから。カナエちゃんはカナエちゃん。
しのぶちゃんは、カナエちゃんが大切だから自分の心の声が我儘に聞こえるのかもしれない。
カナエちゃんの望みを叶えるのと、しのぶちゃんが自分を殺すことは同じじゃないからね」
一息ついてからAは指先に残った米粒をねぶりとり、言った。
「私は、しのぶちゃんがいなくなったら寂しいよ」
「………ありがとうございます」
夜はゆったりとふけていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明朝、先に目を覚ましたのはAだった。
蝶屋敷で借りた寝巻きから隊服に着替え、羽織を着て髪を結った。
早朝のためまだ誰も起きていない。
「……………」
刀を緩やかに抜き、構えた。
架空の相手を見据え、正中線で割るように一線振り下ろす。
その刃を返して脇腹から心臓への一撃、そこから刃を引いて低く構え直し、踏み込むと首を刎ねた。
朝日を浴びて輝く刀身をしばし見つめてから、鞘に収めた。
「……………Aさんは何の呼吸をしているんでしょうね」
「分からない。どの呼吸も使えない」
縁側で見ていたしのぶにいわれ、Aは息をついた。呼吸も乱れず、汗ひとつかかない。
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moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年5月4日 6時) (
レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます！ (2019年7月18日 21時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - いえいえ！これからも頑張ってください！楽しみにしていますm(_ _)m (2019年7月18日 20時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます！しまった！直しときます！ (2019年7月18日 20時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 面白くて続きが気になります！更新頑張ってください！すこし気になったことがあります。胡蝶しのぶさんの表示なのですが、｢忍｣ではなく、平仮名だと思います。 (2019年7月18日 19時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乾 巽 | 作成日時：2019年6月28日 17時
