検索窓
今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:13,160 hit

14 ページ14

視界も遮るような桜吹雪があまりにも綺麗で、ついぽつりと口にした桜寿朗、という名前を総寿朗さんが気に入り、息子につけてしまったのだ。


「Aさんに名前をつけてもらいたいんです。この子が大人になって、私たちがいなくなった時、名付け親が居たら心の支えになると思うんです。
Aさんにしか頼めない」


私は、戦闘か鬼化中に日光を浴びるかしない限り死ぬことはない。
だから引き受けた。


「ーーーーーたしかに、引き受けさせて貰います」


桜。木、木のこずえ。槇。
嗚呼思いついた。


「煉獄槇寿朗。こずえの字で槇。
樹木の先まで余すところなく水を吸い上げるように、色んなことを学んで、その枝先に寿をひっかけて手に入れられますように」
「良い名だ」


そう呟き、何度も赤ん坊に名前を繰り返した。


「お前の名前は煉獄槇寿朗だ。槇寿朗。槇寿朗。その名の通り生きてくれ」


その声はもう大声ではなく、弱々しい、老人のそれだった。その儚さに、老いと衰えを感じてしまった。
私は寂しくなった。
後何年、総寿朗さんと話ができるだろう。
明るく豪快に笑うこの人が好ましかった。
一番信頼している。
一番感謝している。


「私を鬼殺隊に招いてくれてありがとう。
何度も命を助けてくれてありがとう。
出会えてよかった。
感謝してる」
「唐突だな。礼には及ばんさ」


総寿朗さんは笑った。
そしてその八年後、自宅で静かに息を引き取った。
鬼殺のために出ていて、死に目には会えなかったが葬式には行った。
生前の騒がしさが嘘のように静かに眠る姿に、ヒヤリとした嫌なものがあった。


私はこの先何度も何度も、こうやって見送るのか。
皆私を置いて逝くのか。


寂しかった。


「私にとって君は生涯最高の友人だった」


老いぬこの身が恨めしかった。
同じ寿命で、朽ちてしまいたかった。
鬼のまま日の元へ出てしまおうかと思った。
目を伏せたまま死顔を見る私に、槇寿朗が声をかけた。


「Aさん?」


槇寿朗の顔を見た瞬間、ほむらちゃんの言葉を思い出した。
名付け親だけでも居てくれたら支えになると思う。
それは、私が人より長い悠久の時を過ごせるから。
自分が見ることのない子の生涯を見届けて欲しいという願い。

それを承諾したのだ。

自害などしたら、総寿朗さんに怒られてしまう。


「何でもないよ、大丈夫」


ぽんと頭を撫でて微笑んで見せた。

15→←13



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
98人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 夢小説
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2020年5月4日 6時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます! (2019年7月18日 21時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - いえいえ!これからも頑張ってください!楽しみにしていますm(_ _)m (2019年7月18日 20時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます!しまった!直しときます! (2019年7月18日 20時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
夏終朝凪(プロフ) - 面白くて続きが気になります!更新頑張ってください!すこし気になったことがあります。胡蝶しのぶさんの表示なのですが、「忍」ではなく、平仮名だと思います。 (2019年7月18日 19時) (レス) id: 8142368f1e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年6月28日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。