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「いやあ、そんなことありませんよ」
「褒めてねぇよ、何で照れてんだバカタレ。……それで、どう思う?」
「と、言うと?」

 土方は動揺した素振りも見せず、なおも冷静な態度で座していた。

「この写真の女性――今のお前から見るとA副長のことだが、彼女は、お前とどんな関係だったんだ?」
「姉の友人の方です。私もよく遊んでいただいたのを覚えていますが、まさか同一人物だとは……」
「そうか。お前は気付かなかったんだな?」
「ええ、まったく。まだ幼い頃でしたし、姉が亡くなって以来顔を合わせていませんから。……それが、何か?」

 土方は念押ししたあと銀時と目配せした。それを不審に思ったのかあるいは奇妙に感じたのか、池田は不安げに眉を寄せて尋ねる。

「いいや、確認しただけだ。近藤さんに報告して来るからここに居ろ」

 そう言って土方は会話を終わらせた。原田たちにそのまま待機を命ずると、銀時と一緒に廊下に出る。

「ちょっとおかしいんじゃねぇの」
「ああ。初めてあの絵を見た俺たちでさえ、似ていることにすぐに気が付いたんだ。池田が似絵に描かれた男の息子であると、持ち主であるAが知らねぇはずはない」
「それなのに、あいつはあの新人くんには何も言ってねぇときた。昔馴染みに出会ったんだ。友人の弟とはいえ、普通は一言くれぇ話しかけると思うんだがなあ」
「そもそも、なぜ友人の父親の似顔絵を持っているんだ。一体何の目的で……」

 彼女を覆う霧が徐々に晴れてゆくのを感じていた。しかし、もっとも大切な部分。彼女の心は固く錠がかけられていて手が届かない。あと少し、もう少しなのに。


 土方らが客間の前に戻ると、局長の近藤とAの義妹である凛が談笑する声が聞こえてくる。万事屋の神楽や新八もすっかり彼女に馴染んでいるようだった。

「いやあ、それにしてもしっかりしておられる。お凛殿はおいくつなのかね?」
「十七です。兄とは十歳差で」
「へぇ、それじゃあ、お兄さんが出来たのは十一年も前のことなんですね」
「ええ。私にとっては、もう当たり前の存在だわ」
「本当の家族みたいアルな!」
「どうかな、私はそう思っているけれど……。兄は私と出会う直前に元の家族を亡くしたばかりだったから」
「兄君はあなたのことを大切に思っているはずさ」

 十一年前、幕府の動揺の中、三つの出来事が同時に起こった。ある若い娘は家族を、ある少年は姉を失い、ある少女は姉を得た。すべては繋がっている。

十六、狭間にて→←.



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組   
作品ジャンル:アニメ
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長谷夏子(プロフ) - ukyo_0527さん» こちらこそ、ご覧いただき本当にありがとうございました。長い間応援してくださって感謝しております。 (2023年1月4日 10時) (レス) id: 394b5918dd (このIDを非表示/違反報告)
ukyo_0527(プロフ) - 最後まで読めてよかった。作者さんありがとうございました。 (2023年1月4日 4時) (レス) @page49 id: 7920f89ce1 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - いくまさん» コメント嬉しいです、いつもご覧いただきありがとうございます!!お褒めの言葉大変恐縮です、これからも頑張ります!よろしくお願いします! (2021年8月6日 0時) (レス) id: 394b5918dd (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - いつも更新楽しみにしています。書き方や表現の仕方が大好きです。更新頑張って下さい、待ってます、、!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - 饅頭こしあん派さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです!自由な時間が増えてきたので少しずつ更新していきたいと思います、よろしくお願い致します! (2021年8月4日 14時) (レス) id: 394b5918dd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長谷夏子 | 作成日時:2020年1月5日 12時

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