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「うわ、こりゃ懐かしい。そんなもん引っ張り出して何してるんでぃ」
「総悟、まだガキンチョじゃねぇか」
背後から突然声が聞こえたものだから、土方と銀時は飛び上がらんばかりに驚いた。
「総一郎くんかよ、急に近付いてくるんじゃねぇよ」
「総悟です」
「Aの持ち物の中にたまたま見つけただけだ。びっくりさせんな、総悟」
総悟はまったく表情を変えずに棒読みで報告した。その後ろでは、大柄でスキンヘッドの原田右之助が、強面に怪訝な色を浮かべてこちらを見ている。
「まあまあ、お二人さんを連れてきやしたぜ」
「何の用ですか、土方さん。池田も連れてこいって総悟から聞いたんで声掛けてきましたけど」
原田に土方の前へと押しやられた十番隊の新人隊士、池田六三郎がおどおどした様子で太い眉を八の字にする。
「土方副長、何か御用でしょうか……」
「まあ、座れ。総悟と原田は後ろだ」
土方は新人隊士の顔をじいっと見つめる。向けられる視線に耐えられなくなったのか、池田六三郎は目を泳がせて萎縮した。
「つかぬ事を聞くが、お前、父君のお名前は何というんだ」
「はい?」
「お前の父上のお名前を教えてくれ」
予想だにしない質問をされ、池田は大きな目をさらに丸くして聞き返した。土方が再び尋ねると、池田は不思議そうな顔をして素直に答える。
「……池田六之助と申しますが」
総悟は顔を上げた。知った名前である。総悟が新人隊士の背後から銀時と土方を窺うと、眉ひとつ動かしていない。
反応を出さぬが吉、ということらしい。総悟は二人に従うことにした。
「そうか」
土方は、例の似絵を池田に見せた。名前の書かれている部分は指で巧妙に隠している。
「この絵についてどう思う」
「お上手です」
「そういうことじゃねぇ。この男に見覚えがないかってのを聞いてるんだが。……お前に似てると思わねぇか? どうだ?」
池田は絵を観察し、深く頷いた。
「似ています。しかし、これは私というよりも先ほど申し上げた私の父に似ていると思います」
「なぜそう思うんだ」
「この絵には、目元にほくろがあるからです。これは私には表れていないでしょう?」
「なるほどな」
土方は顎に節の張った手を当て、考え込んだ。すると、今度は銀時が池田に質問をし始める。
「親父さんは今、何してるんだ?」
池田は話しづらそうに少々口ごもったが、覚悟を決めたように銀時と土方を真っ直ぐに見た。
「蒸発しました」
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長谷夏子(プロフ) - ukyo_0527さん» こちらこそ、ご覧いただき本当にありがとうございました。長い間応援してくださって感謝しております。 (2023年1月4日 10時) (レス) id: 394b5918dd (このIDを非表示/違反報告)
ukyo_0527(プロフ) - 最後まで読めてよかった。作者さんありがとうございました。 (2023年1月4日 4時) (レス) @page49 id: 7920f89ce1 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - いくまさん» コメント嬉しいです、いつもご覧いただきありがとうございます!!お褒めの言葉大変恐縮です、これからも頑張ります!よろしくお願いします! (2021年8月6日 0時) (レス) id: 394b5918dd (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - いつも更新楽しみにしています。書き方や表現の仕方が大好きです。更新頑張って下さい、待ってます、、!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
長谷夏子(プロフ) - 饅頭こしあん派さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです!自由な時間が増えてきたので少しずつ更新していきたいと思います、よろしくお願い致します! (2021年8月4日 14時) (レス) id: 394b5918dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長谷夏子 | 作成日時:2020年1月5日 12時