【d!】空席はございません (ページ9)

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啄ばむ蝶が、二匹【eml】ページ9

私の淹れたコーヒーに口付けた瞬間、彼女は案の定顔を顰めた。

「やっぱり苦いよエミさん…」

「これでダメならもうブラックコーヒー飲める様になるのは無理なんとちがいますか？」

「それでも飲める様になりたいの！」

全く。彼女の、このこだわりはどこからきているのか
長期の任務から期間して帰ってきて、久しぶりに部屋に来てくれたかと思えばこれだ。
ブレないにも程がある。もう少し、再会の余韻に浸らせてくれても良いのではないだろうか。

「…でもね、だいぶコーヒーの味は分かるようになってきたんだよ」

「おっ、すごいやないですか」

「うん。…後は苦いのさえどうにかなれば…」

「無理そうやな。」と思ったが、目の前で意気込むAにそのまま正直にそれを伝えてもふてくされるだけだろう。
彼女の言動なんて単純で、容易く予想できる。
半ば諦めの気持ちから漏れかけた言葉を胸の内に秘めて、自分もコーヒーを啜った。
苦い苦いと言いうつコーヒーを飲み続けているAだけど、無理をしている訳でもなさそうやった。

「…あのね、エミさん」

「ん？」

「私に涯の無理なんだけど、エミさんが淹れてくれたコーヒーだったら飲めるんだよね。」

なんでだろ、と首をかしげる彼女の様子を見るに、本当にその事実を心底疑問に思っている様で。

「なにか私のコーヒーにだけ入れてたりする？エミさん」

「まさか。何の変哲もないただのコーヒーですよ」

「あれ？おかしいな…。」