【d!】空席はございません (ページ6)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:1,231 hit

▽ ページ6

「…A」

「ん？なに？」

「…嫌だったり、せんの？俺がこういう事言ったりすんの」

でも、やっぱり。彼女に問いただせずにはいられなかった。
後悔は、むしたくないから。

いきなり振られた話題に盛大に困惑しているのか、きょとんとした顔で固まったまま俺の顔を凝視するA。
けど、その表情も数秒と経たない内に崩れて、彼女はやはり大きく口を開けて笑い出した。

「っ、ははは！ショッピ、変な事きかないでよ！」

「…人が真面目くさって聞いてんのに、むかつく人やなホンマ」

「ごめんごめん。だって、ショッピ君が似合わない事聞くから。」

余程可笑しかったのか、ろくに誠意なんてこもってるはずもない謝罪をしながらも、緩む口元を抑え切れていない。
あんまり笑うもんやから、生理的な涙がAの両目に薄く膜を張っていた。

「嫌なわけ、ないじゃん。心配性だなあ」

こんな事でも、そう笑い飛ばしてしまう彼女に。
つられて俺も笑ってしまったのは、ここだけの話だ。

ふわふわと、元々一箇所に留まる性質ではない彼女は、すぐに俺のところを離れて違う場所に行ってしまった。

「ショッピ君。」

「なに？」

「…心配しなくても、嫌いになんかなってやんないから！」

ただひとつ、呪いともいえる置き土産を遺して。