【d!】空席はございません (ページ5)

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永遠に解けやしない【sho】ページ5

「ショッピ君やショッピ君」

人の口に戸は立てられぬ、とは実によく言った話だと思う。
俺が別に誰かに聞かなくても、Aが基地に帰ってきたらしいという話が耳に入ってきたという事実がその言葉を何よりも裏付けている。

「(…もう、そんな立つんやな。)」

Aがグルッペンさんからの任務を受けて基地を出てからどれほどの時が経過したのか。
もう正確な月日は覚えてはいない。それ程までに、彼女がこの基地から出て行ったのは遠い昔の事だ。
元々長期の任務で足がついて潜入先の国に任務の事を勘付かれてはいけないからという理由で、元々達成するまでは帰れないという話やったけど、まさかこの基地にいる連中全員、Aがここまで帰ってこないとは想像していなかったのではないだろうか。
現に俺がそうだったように。

最初はこの基地の中に、笑いながら俺の名前を呼ぶ彼女の姿がないというだけで違和感を拭えなかった。
でも、人というのは嫌でも環境に順応する生き物で、いつしか基地の中にAがいないというのが当たり前になり、思いがけず彼女の姿を探す事もなくなっていった。

だから、久しぶりにAに会うのはどこか懐かしいような、くすぐったいような妙な感じだった。

「なんや？久しぶりに会ってもうっさい人やな。」

「ひどい！」

そうは言うものの、口を大きく開けて笑いながら言っているので何の説得力もない。
間抜けな振りをして案外鋭い彼女の事だから、きっと最初から分かってくれてるんやろうな。
俺が吐き出したつめたい言葉のどれにも、本心なんて何一つないって事を。