【d!】空席はございません (ページ15)

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本当に好きだったのは【rbr】ページ15

最近イヤホンが壊れたので、新しくヘッドフォンを買った。
今更またイヤホンなんか買っても意味ないと感じたから。

そう思っていた矢先。

「ねえ、聞こえてないの？」

今の今まで俺の耳に直接流れ込んできていた音楽が遠のいて、代わりに優しい声が俺の鼓膜をなでた。
ああ、やっと、か。
待ちに待ったその瞬間が訪れたのを悟った俺は、バッと勢いよく振り向く。

そこには数年前と変わらん姿で、俺の事を見下ろすAの姿があった。

「A、…久しぶりやな」

「久しぶり。…部屋にいないと思ったら、こんなところにいたなんてね。」

どっこいしょ、といいながら俺の隣に腰を下ろす彼女。
彼女の綺麗な横顔に思わず見惚れていると、近距離でかちりと視線があった。
なんや、その事実にどう反応して良いか分からんから、慌てて目線を逸らそうとしたんだけども

「ロボロ」

微笑みながら俺の名前を呼ぶもんだから。
まるで蛇に睨まれた蛙にでもなったかの様に全身が硬直して、満足に動けなくなる。

そんな俺に気付いてないのか、構ってないのか。
まあほぼほぼ前者やろうけど、いずれにしてもAは俺からとった真新しいヘッドフォンに視線を移す。
そして、ぽつりとこんな事を言い出した。

「ヘッドフォンにしたんだね」