【d!】空席はございません (ページ14)

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それから少しの間、俺達は時折お菓子を間に挟みつつ、話をしていた。
重要な話や仕事の話は一切していない。本当に取り留めの無いただの雑談や。
Aが任務に行ってた時に起こった事、その間にこの国で起こった出来事、幹部連中の話。

「あれ、このマカロン可愛いね」

そう言って桜色のマカロンを摘んだ彼女の背景は、オレンジ色の光が微かに窓から差し込んでいる。
時間が経つのは恐ろしく早い。数十分なんて、ものの一瞬で過ぎ去ってしまう。

「マンちゃん、話聞いてくれてありがとう！久しぶりに楽しかった！」

「…ええんよ。こっちこそありがと。…この次はまた別の奴のとこいくん？」

「うん。一年振りに帰ってこれたからね。ちゃんと皆に挨拶しないと。」

普段大雑把な彼女は、その分律儀なところはとことん律儀や。
そんなAの正確が、俺との今のやり取りでよく現れてる様な気がした。

「またね、マンちゃん！」

バタンという、決して乱暴ではなかった扉の閉まる音が、俺にはやけに大きく聞こえた。
分厚い気の扉は、向こう側に去ってしまった彼女の姿を容易く隠してしまう。

暫く名残惜しく、彼女が向こう側に消えていった扉を眺めて。
俺は再び桜色のマカロンに手を伸ばした。