【d!】空席はございません (ページ1)

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神様の宿木【sinp】ページ1

「ぺ神…？」

彼女が気まずそうにそう言って医務室に顔を出したのは、基地内が不気味な程静かな日の事だった。
暫く目にしていなかった彼女の姿に驚き一瞬固まってしまったものの、すぐにある事実を思い出して再び彼女に向き直った。
そういえば、今日は彼女が帰ってくる日やった。

「…久しぶりやな、A」

「うん。…本当に久しぶりだね。」

にこり、と笑う彼女。
その笑顔は無理して作っているのだと一瞬でわかってしまう程歪なもので。
きっと久しぶりに会う俺に対してどんな顔をして良いのか分からなかったのだろう。
けれども俺は彼女のそんな表情は好きではないので、そんな顔をするのは正直やめてほしい。

しかしそんなのもたった一瞬の出来事で。

「…あーやめやめ。私らしくない！」

大声でまるで誰かにあてつける様に独り言を言い切った彼女は、そのままの良い勢いで俺の向かいに設置していたイスに座る。
ぶらぶらと床に届かない足を弄び、くるくるとイスに座ったまま回転してみせるAは、笑えるくらい以前の彼女そのままやった。

「はは、なにしてん。」

そんな彼女の姿に、自然と笑みがこぼれた。
せや。それでこそ、Aや。

「ねね、ぺ神。」

「んー？」

「もしかして私がいない間ビールいっぱい飲んでたんじゃない？服の上からでもお腹やばいの分かっちゃうよ」

「…はははー」