BAD LOVER

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『立てる！？？』





うるさ…


なんなのこの人……




その眩しいくらいの

満面の笑顔を浮かべるその男の人は、


図々しくも、

私の腕を強引に捕まえ

自分の前に私を立たせた。






「ちょっと気分悪くて……」



『まじ！？
病院いく！？？』



「い、いえ！
ただの飲みすぎなので…」




チラッとその男性を見ると

心配そうに私を見つめ、

まるで子犬のような顔をしていた。




子犬？



うーん、


まぁ、子犬っぽいけど……




なんかに似てんだよな〜






『ねぇ！ホントに大丈夫！？』



「…あ、はい。
ありがとうございました」



『気をつけてよ？
この辺、変な人多いからね！』




変な人…か……




「…ふふ」



『え！？なに！？？』



「いや、私にしてみれば
お兄さんが一番変だから(笑)」



『変！？なんで！？』



「だって…普通ほっとくでしょ、
私みたいな女のことなんて」



『なんで！？ほっとけないでしょ！』





なに？とか、

なんで？とか……



なんで疑問形ばっか？




ていうか…


やっぱりこの人の顔、

見れば見るほど何かに似てる…





「あっ！」



『わっ！なに！？』



「カワウソ！」



『カワウソ？』



「…に似てるって言われない？」





キョトンってしてるその男性



見れば見るほどカワウソに見えてきて

何だか笑えてくる。




「ねぇ、その顔やばい、
面白いからやめて。」



『はぁ！？なにそれ！
めちゃくちゃ失礼すぎ！！』





笑顔から心配顔…


心配顔からキョトン顔…


キョトン顔から怒り顔……



まだ出会って数分しか経ってないのに

なんでこの人はこんなに色んな表情をするの？



面白すぎでしょ…(笑)





『俺だって人間だし！』



「そうだね(笑)」



『ちゃんと名前だってあるし！！』



「名前？なんて言うの？」



『……ニカ』



「ニカ？」



『そっ！』





そう言って、

ニカと名乗るその男性は

また笑顔になった。






二「じゃあ、俺行くね！」



「あ……」





ニカと話していて、

いつの間にかさっきの気分悪いのが

どっかに吹っ飛んでいった。





「ニカ！」



二「ん？」



「ありがとう！」



二「…笑顔ね！」



「え？」



二「笑顔でいればいいことあるって！」





そう言い残して

この場から去っていったニカ。




私はその時の

ニカの笑顔が忘れられなかった。







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