ぼくの恋人 その5 ページ50
ー平川Sideー
「……一也」
横で寝ている彼に向かって、こっそり声をかけてみる。もちろん起きる気配はない。昨日はたくさん話したし、千路くんを甘やかして飲みすぎた気がする。
平川「…寝坊は良くないぞ〜」
頬をつついてみる。すると突然千路くんの腕が俺を捕まえるように自分の方へ引き寄せた。
平川「!」
「…おはようございます」
平川「起きてたの?」
「………初めて名前で呼んでくれた」
起きがけににへっと笑う。じゃあ全部分かってて寝たフリしてたのか。
平川「寝たフリひどくない?」
「もしかしたらもっと触ってくれるかな、と思って」
………まったく…………
こうして、誰かと朝を一緒に迎えるのは久しぶりかもしれない。若い頃は飲み会の延長に付き合ってるうち、気がついたら朝に…。なんて意味で"朝を迎える"事はあったが、今はそういう形としてすら、長い時間を人と過ごすこともなくなってきた。
ぼーっと考え事をしていたら、千路くんがこっちを見ていることに気がついた。
平川「…なに?」
「またデート行きたいな〜って思いまして…、まぁ忙しいし無理だよなぁ…」
平川「………行こうか」
「え?」
平川「新潟はちょっと寒いけど、一也も東北出身だし大丈夫だよね」
「新潟?もしかして故郷…」
平川「良い所だよ。」
「…良いんですか!?俺めっちゃ行きたいです!」
彼は一々表情やリアクションが面白い、だからダメと分かってても甘やかしたりからかい過ぎたりしてしまう。
しつこく聞かれたので、そんな話をついあの人にこぼしてしまった。
森川「まさか大輔から惚気を聞く時が来るとはな〜令和だなまさに」
平川「令和関係ないと思いますよ」
たまたまスタジオで会ったので、立ち話でもどうかと誘われた。けど最近の動向からしてまた何か意図がありそうだ。
森川「お前はそんなにラブラブでも一切仕事に持ち込まねぇもんな。いつも通りニコニコしてるから良いけど…千路はなぁ、ちょっと漏れてんな、幸せオーラみたいなのが」
平川「じゃあもうちょっとドライに接した方がいいですかね」
森川「それはやめとけ!すぐ落ち込むからアイツは…まあ、すぐ立ち直るけど。で!声優の中じゃ比較的まともなお前に相談したいんだけどさ〜…」
平川「?」
森川「Aのマネージャー、いるだろ?ちょっとお話聞いてきてくんない?」
平川「Aさんの…蓮水さん…でしたっけ」
9人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:勿忘草は浅葱色を纏う x他1人 | 作成日時:2019年12月5日 18時