職場の先輩と幼馴染が結婚した件について (ページ15)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:7,468 hit

思い切ってみろよ　その4 ページ15

ー平川Sideー

『お前の本当の気持ちが分からないよ』
昔の恋人に、別れ際そんな事を言われた。本当に昔の事で、今の今まで思い出すことは無かったのに、突然そのことを思い出してしまった。

あぁ、似てるからか……。

あの時の恋人と、千路くんの表情。よく似ていた。悲しげな目で、無理に笑顔を作ろうとしていた。
千路くんの告白を断った時、やっぱり悲しそうな表情だった。そんな顔をされたらつい手を取りたくなる、けれど俺にはできない。資格がないのだ。

千路くんには内緒だけど、男の人と付き合うのは初めてじゃない。俺には男の恋人が居た。

　俺はその恋人の要求に全部応えれば上手く行くとばかり思っていたから、それを鬱陶しく感じた「彼」から別れを告げられてしまったわけだけど。
だから自分には、例え好意を向けてくれたとしても、また必要以上に応えてしまって、うざがられて終わる結末が見えるのだ。

結局エゴの塊だ。自分が傷つくのが嫌で、千路くんをフッたのだから。

千路くんはどうやら俺をとても大人で、優しくて、綺麗な人間に見えているみたいだけど、全部勘違いだよ。自分の気持ちも素直に言えない卑屈な人間なんだ。

けれど現実というものは容赦なくて……。示し合わせたように、千路くんとの共演情報が舞い込んできた。

仕事は仕事だ。スキを見せたくないから、つい上っ面なメールを送ってしまった。意地悪だったかな。

すぐに着信が入った。まさか千路くん……？とドキっとしたが、違った。
てかなんで、いま、ドキっとしたんだろ。

平川「もしもし？」

森川「お前やってくれたな」

平川「…はい？」
　相手は同じ声優で、先輩でもある森川さんだ。

森川「うちの可愛い千路をいじめんなよ〜」

平川「千路くん？なんで…ですか？？」

森川「分かってるくせに〜ホント色男だね、お前は……」

平川「いや、あの、話が見えてこないです。確かに、千路くんとは色々ありました…けど…森川さんが間に入る理由が……分からないんですが」

森川「ざっくり言うと俺にとってアイツは友達の友達の息子みたいなもんなんだよ…。遺書にはそんな事書かれてなかったけど、責任は取りたいわけよ、俺的には」

平川「………酔ってます？」

センチメンタルな気分をぶっ壊してくれるよな、この先輩は……。