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そのあとどうやって新幹線に乗って大阪まで行ったのか覚えていない。あたりはもう薄暗くて、おまけにどしゃぶりの雨まで降っている。雨粒なのか、それとも涙なのか汗なのか。分からないほどびしょ濡れになってしまった。
家に帰りもせず、適当に道を歩く。傘もささずに一点を見つめ足を運んでいる俺を見て、通り過ぎる人たちは引いた顔を向けてくる。
「 かっこよかった、なぁ 」
俺なんかよりずっと。あんなん見たら、逆になんで俺と付き合ってくれてたん？なんて考えてしまう。今までの思い出があいつに上書きされると思うと自分が本当に哀れに見えてくる。
” まだ来ないの？ ”
彼女からメッセージが届く。いつのまにか関西弁も消えてしまっている。俺は初めて既読無視をした。
「 はぁ…… 帰ろ 」
ため息をつき前を向くと、正面から歩いてくる人とばちりと目が合う。緑色の傘をさしたその人は言った。
「 え、…… シゲ？ 」
神ちゃんだ。驚いた顔をしてこちらを見つめている。
…… あーあ、神ちゃんは今、幸せなんやろうな。恋人ができて。わざわざ東京まで出向いて、浮気現場見てしまった俺なんかと違う、最高な気分なんやろうな。
神ちゃんから、もう 好き って言ってもらえることも無くなるんか。流星のもんやもんな。俺にあったかい笑顔を向けてくることも、照れたように顔を赤くすることも、全部全部無くなるんやろなぁ。
……………… 嫌、やなぁ。
「 ……、えっ、シゲ、？ 」
気づいたら俺は、俺より小さいその体を抱きしめていた。緑色の傘は宙を舞い、地面に落ちていった。
「 …… 流星んとこ 、行かんといて 」
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作者名：よもた | 作成日時：2024年1月31日 0時
