ご先祖様がついてくる【鬼滅の刃】

#17　笛 ページ17

「縁壱」


誰かが縁壱さんを呼んだ。


「助けて欲しいと思ったらこの笛を吹くんだ。兄上が必ず助けに来る」


兄上？

兄上って誰？

私に兄はいないよ。

──……あぁ。そういえば。

私が産まれる前に、前の子は流産したって父は言ってたっけ……

名前も付けられずに流産した私のお兄さんなの？

違う。この人は縁壱さんのお兄さんだ。


「必ず助けに来るからな」


あぁ。

なんて優しく真っ直ぐな瞳なんだろう。

兄上……兄上……


『あに、うえ……』

縁壱「気がついたか」


目を覚ましたら縁壱さんの顔が目の前にあった。

あれ？

ぼやける視界で顔を動かすと藤の家ではないようだ。

ここはどこだ？


縁壱「動くな。肋がやられてる」


縁壱さんはそういうと側にあった椅子に座った。

幽霊だから疲れることも寝ることもないと言っていたが、座ることはできるようだ。

起き上がろうとしたらズキン、と肋骨が痛みだした。


縁壱「動くなと言っただろう。呼吸も忘れている」

『すみませッ……！』


私はもとの体制に戻り寝転ぶ。


縁壱「ここは蝶屋敷と言っていた。どうやら怪我人を治療する場のようだ」


怪我人なんですね、私……

あぁ、怪我をしてしまった。

痛みなんて慣れてるのに。

頭には包帯が巻かれているようだ。

やっちまったーと思っていたら扉が開いた。

女の子が私を見るなり走っていった。

すると別の人がやってきた。


「あら、ようやく目が覚めたのですね」


蝶の羽織りを着た女性がやって来た。


しのぶ「私は蟲柱の胡蝶しのぶです。貴方は鬼を斬った後倒れたそうなので、煉獄さんが運んでくれたんですよ」

『煉獄さんって誰ですか……？』

しのぶ「炎柱の煉獄杏寿郎さんです。それにしても」


しのぶさんが笑顔を向けた。


しのぶ「煉獄さんが追ってた鬼を倒すなんて、とても実力がありますね」

『……え？なんのことでしょう？』

しのぶ「あら？気づいていないのですか？煉獄さんが斬ろうとした鬼を深手の貴方が倒したのですよ」

縁壱「柱より先に鬼を討ったのだ」

『え？』

しのぶ「もう一度説明したほうがいいんですか？」

『あ、違います！私、柱より先に鬼を斬ったのが信じられなくて……』

しのぶ「だからさっきも言ったじゃないですか。実力がありますね」

『えぇ……ないです』

しのぶ「そんな悲観しなくていいんですよ。怪我が完治するまでここにいてもらいますけど」


私は苦い薬を飲まされた。

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