#210 沈黙 ページ12
威嚇する目つきに口調。
私はそれを淡々と見つめていた。
男がさらに声を荒げ、毒ついた言葉を出すので警備員がまたさるぐつわをさせた。
大臣は私を見て言う。
「こいつを使って人体実験してもらって構わないです。だからこいつを引き取ってください」
『はぁ……大臣、こいつを引き取ろうとしよう。私が年上に対してのマナーとルールを教えてやるよ』
「ありがとうございます！」
『こいつを地下室に連れてってくれ』
警備員達にそう言うと、男をひっつかんで地下室に連れてってくれた。
椅子に座らせて両手両足を縛り付ける。
胴体にも膝にも巻きつける。
椅子から立ち上がることも移動することもできなくなった男は私を見た。
私はそれを無視して大臣と警備員達を帰らせた。
椅子を持ってきて私は男の前へと座った。
さるぐつわを外してあげても叫びも喚きもしない男。
『君の名前は？』
「……」
『あんなに喚いてたのにだんまりかい？』
「……」
『沈黙は肯定ととらえるね』
地下室を見渡す男。
『気になるの？』
私のことを見向きもしない男。
威嚇していた目は、怯える目に変わっていた。
『怖くないんだろ？』
唇はかすかに震えている。
注射針やらフラスコ、大鍋、薬、本、数えきれないほどの私の所有物。
棚にも床にも机上にも私の考え途中の魔法の数々。
『人の体とは効率よくできているんだよ。人の体を機械で代用しようとしたら、およそビル三階分に及ぶのを知っているかい？』
男は私をさらに怖がるような目で見てきた。
どうしてそんなこと知っているんだ、とでも言いたいのか、いや、言えないのか。
『機械というのは人間界ではあまり発達していないらしい。まぁ、数百年もすれば発達するだろうけど』
『生きたまま冷凍保存されて数百年間夢の中。ふふ、やってみたいね』
私は椅子から立ち上がり、机の引き出しを開けながら男に言う。
『でもそこまで人を管理したくないな。私一人でもいっぱいいっぱいなんだよ。だから』
注射器を手に取り、男の前まで行くと男の腕の服をめくった。
『実験のやりすぎで私の体は痛みが効かない体になってしまった。そこで君には私の痛みを取り戻す架け橋になってもらうよ』
注射針を男の腕に刺す。
『人体実験というのは嫌だから、一緒に魔法を研究しようではないか。大丈夫、痛みはいずれ快 楽に変わるから』
男の悲鳴が地下室に反響した。
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こ - うおおおおおお最高でしたありがとうございました (2023年3月27日 15時) (
レス) @page20 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
アニマトロニクス(プロフ) - 最後の最後まで素晴らしい作品でした！食人鬼さんの作品に出会えてとても良かったです。 (2018年10月4日 6時) (レス) id: 538062cc7f (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - なるほど、質問に答えて頂きありがとうございました！ (2018年9月8日 21時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
名無し61903号(プロフ) - ぴのさん» 歳は取りません。しかし、主人公の精神年齢が低いのです。 (2018年9月8日 21時) (レス) id: f947700d9f (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても感動しました。質問なのですが、不老不死だと歳を取らないと言うことでしょうか？ (2018年9月8日 19時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：食人鬼 | 作成日時：2018年8月31日 11時
